62 / 134
12-休日すけべ
どたばたてんやわんやなこのご時世、残業は日々あるものの土日祝は割ときっちり休ませてもらっている由紀生。
「え、カズ君も休みとってたの?」
数也が三連休中に一日休みをとったと聞き、これから出勤しようと玄関で靴を履いていた由紀生はぱぁぁっと顔を輝かせた。
父親を送り出すため一端起床していた数也は寝起きのためぼんやりした眼差しで欠伸交じりに頷く。
「どこかぶらっと出かけてみる?」
由紀生が問いかけると映画館での嫌なことを思い出してファザコン息子は仏頂面になった。
「外出するとろくなことねぇ。ウチで過ごせばいーんじゃねぇの」
「そっか、わかった。じゃあ行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
数也に送り出された由紀生は満面の笑顔で朝日が清々しいマンション外へ。
一般企業に勤務する由紀生とイタリア料理店のホールスタッフである数也。
勤務時間や休みなど生活にズレがある親子は同居していながらも普段食事を共にとる回数が月に僅かだったりする。
お互い休みが合い、家族団らん、二人っきりで時間を過ごす、そんな極々ありふれたことが無性に嬉しくて由紀生は待ち遠しくなった。
そうだ、お休みの日に久し振りにいっしょに食べるランチ、駅前のパン屋さんの卵サンド買っておこう、並ばないと買えない絶品サンド。
カズ君とのんびり家で休日、わーいわーい!
「……オヤジと久し振りの……」
笑顔が独りでに溢れてしまう由紀生、一方、二度寝するため自室のベッドに潜り込んだ数也は久々となる家族団らんデーを来週に控え、ぞくり、思わず武者震いするのだった……。
そんなこんなで三連休、二人揃ってお休みの、朝。
「ん……ん、ん……んっ……んん……?」
七時過ぎ、休日の醍醐味である遅寝をベッドで満喫するはずだった由紀生だが。
閉ざされた厚手のカーテンから滲む快晴の日射し。
うっすら暗い部屋の壁際に設置されたベッド。
「あ、あれ……?」
一体いつの間に潜り込んだのか、数也が由紀生に無断で添い寝していた。
季節の変わり目用の七分袖パジャマを着て横向きに寝ていた父親の背にぴったりくっついて。
「はよ、オヤジ」
「カズ君……おはよう、え、いつ来たの……?」
「さっき」
「ぜん……ぜん、気づかなかった……ふわぁ」
昨晩は借りてきた映画を観て夜更かししていた由紀生、欠伸をしながら目元をごし、ごし、こどもがするみたいに眠たげに擦った。
「あれ、まだ八時前だよ……あれ……カズ君、裸……? 風邪引いちゃうよ……?」
「下は履いてんぞ」
布団の下に溜まった温もりを攪拌するように数也の両腕が由紀生をゆっくり抱きしめた。
ともだちにシェアしよう!