105 / 134

パラレル番外編-2

「そのコ、見れば見るほどカズヤ君にそっくりですね! 兄弟みたい!」 本日、数也が渋々同行を許可していた爽やか部下に特急列車内で言われて由紀生は飲んでいたお茶を噴き出しそうになった。 「そ、そうかな、カズ君のイトコなんだけどね、急に一人増えちゃって悪かったね」 「ちゃんと連絡入れましたから! 問題ないです!」 「つぅか何で俺とオヤジが隣同士じゃねぇんだよ」 普通車の指定席、シートを回転させて四人向かい合っているのだが、由紀生と部下が横並びに、向かい側には二人の数也が仏頂面で並んで座っていた。 「だって二人で血眼になって主任の隣を競い合って、ジャンケンで負けても二人とも納得しないで発車しても決着つかないから、僕が座っちゃった!」 五月の化身のような爽やか部下の言葉に二人の数也は堂々と殺気立つ。 「もっと通路側寄れよ、オヤジにもたれかかんじゃねぇ」 「主任、カズヤ君の親孝行っぷり、相変わらずですね!」 窓側に座る由紀生の正面に位置する数也は堂々と文句を垂れ流す、その隣のパツキン数也は大胆に足を組んで部下のゾーンを地味に脅かしていた。 「……俺は別に、そのシートが気に入っただけだ、他のシートには糸屑がくっついてたからな……」 パツキン数也が何やらボソボソ言っている。 由紀生は微笑ましそうに制服姿の不良息子を眺める。 今朝からずっと、タイムスリップしてきた自分に視線が偏りがちな由紀生に数也は断然面白くない。 「トイレ行ってきます!」 爽やか部下がトイレに立つと、すかさず彼のシートを、由紀生の隣をゲットした。 「カズ君」 「オヤジ、サンドイッチ食うか」 「え。でも着いたらバーベキュー……」 ぐうううう。 「……お腹鳴っちゃった」 「朝、急にコイツがトイレから出てきて、それからバタバタで、起きてからろくに食べてねぇだろ」 「そうだね、じゃあ、一口」 「おら」 数也は食べかけの玉子サンドイッチを掲げ、由紀生は餌付けされるみたいに我が子の手から、一口ぱっくん、した。 向かい側で見ていたパツキン数也は目を見開かせた。 みるみる、ますます、殺気立っていく。 「家族だからって、イイ年した男二人でやめろ、気色悪ぃ」 そうか、やっぱり、このカズ君は。 お父さんに……色々してくる前の……カズ君なんだ。

ともだちにシェアしよう!