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パラレル番外編-3

「カズ君、お菓子食べる?」 「食う」 「いらねぇ」 「あー……オヤジ、呼び方に区別つけろよ」 「紛らわしいんだよ」 「おい、俺のオヤジに文句言うんじゃねぇ、殴られてぇのかテメェ」 「殴ってみろよ、殴り返してやる」 なんでカズ君っていつの時代も血の気が多いんだろう? 「じゃあ数也」 「ッ……お、おう」 「こっちがカズ君」 「……」 由紀生からの貴重な呼び捨てに数也は内心ドギマギ、一方、普段通りの呼び方にパツキン数也はつまらなさそうに舌打ちした。 「ッチ」 「おい、オヤジに対して舌打ちすんじゃねぇ」 「カズ君、じゃない、数也も時々お父さんに舌打ちしてくるよ」 「ッ……悪くねぇな……そーいうプレイのときくらいしか呼び捨てされたことねぇもんな……」 「あ? プレイ?」 「っ、そうだ、カズ君、今高校何年目っ? 学校楽しい? 忘れ物してない?」 「まだ二年目だ……学年は一年だけどな」 「留年してんじゃねぇか、ダセぇな」 「数也だって留年を繰り返して、六年かけて高校卒業したよね?」 「六年だぁ? どーいう脳みその構造してんだよ? どっか道端にボトボト落としてきたか?」 「いちいち腹の立つクソガキが、眼球に玉子サンド詰めてやろうか」 「数也っ、おめめで玉子サンドは食べれないよっ、口で食べるんだよっ」 「そっから教えてやんなきゃいけねぇレベルかよ」 「テメェーー」 「あれ、僕がいないところで席替えしてる!!」 血の気が多い数也同士が睨み合っているところへ爽やか部下が戻ってきた。 「僕はイトコ君の隣か~、と、見せかけて! 主任のお膝に着席!」 「「ッ……」」 「数也っ、カズ君っ、走行中はトイレ移動以外立ったらだめ!」 お膝目掛けて部下に着席された主任の由紀生は、血の気が多い余り立ち上がりかけた数也二人に咄嗟に「ステイ」を指示したのだった。 郊外に設立された緑いっぱいの広大なアウトドアテーマパーク、その一角に開放的なグランピング施設がある、洒落たテントやコテージがずらりと並び、ソファやハンモックといったフォトジェニックに富んだ寛ぎインテリアも用意されていてラグジュアリー感満載、バーベキューのセット一式から食材まで提供してくれる便利で贅沢な正にグラマラス空間だった。 「タマネギ焦げてんぞ、やべぇ色してるじゃねぇか」 「俺の皿に乗せんじゃねぇッ」 「テメェは焦げ担当な」 「じゃあてめぇは生焼け担当なッ」 二人の数也がぎゃーすか言い合いしながらバーベキューしている光景を、開けたテント内のソファでスパークリングワインをちびちび飲みながら由紀生は眺めていた。 「よかった、仲よくなってくれて」 まぁ、同一人物なんだけど。 どっちもカズ君なんだけど。 カズ君、身長伸びたんだなぁ。 こうして見てみると金髪も似合ってるなぁ。 昔は仕事と家庭の両立でいっぱいいっぱいで、我が子をゆっくり見る余裕なんかなくて、毎日擦れ違ってばかりで。 わかりやすい反抗を繰り返すカズ君が何を考えてるのかさっぱりわからなかったけれど。 『オヤジにがっつり突っ込めれば……ストレス解消、成功ぉ……もうフラフラしねぇから』 まさかあんなことされるなんて、当時は想像もしていなかったよ、お父さん……。

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