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パラレル番外編-7

「たった十五分の間に調子に乗りやがって、早漏が」 「うるせぇッ、髪拭いてこいッ、床濡れてんぞクソがッ」 「テメェの横っ面で拭いてやる」 「クソがッッ!!」 涙は瞬時に引っ込んで、今にも殺し合いを始めそうな剣幕の数也二人に由紀生は慌てた。 「こ、こらっ、ケンカはだめっ……ケンカしたらクローゼットに二人とも閉じ込めるからねっ」 「一人でも入るスペースなんかねぇし。そんなことしねぇくせに」 数也はソファの傍らに跪いた。 バッチリ合体しているパツキン数也を忌々しそうに睨み返し、ソファに仰臥している由紀生の頭をゆっくり撫でた。 「俺のオヤジにさわんなッ」 「うるせぇ、俺のオヤジに何しようが俺の勝手だ」 今にも牙を剥きそうな数也二人。 せめて血で血を洗うようなケンカだけはしてほしくないと、由紀生は切にそう願う。 「数也、カズ君……」 「ヒイキなんてずりぃだろ、オヤジ」 「え……?」 「今日一日ほとんどソイツにつきっきりで、俺のこと放置しやがって。あの脳天気部下の相手までさせやがって」 「だって、このカズ君はタイムスリップしてきたから」 「知るか。俺にも構え」 「数也」 「俺にも平等に分けろよ……」 パツキン数也は目を疑った。 数也が由紀生にキスし、少し恥ずかしそうにしながらも由紀生が従順に受け入れている姿に、心臓を歪に波打たせた。 「オヤジ……」 数也はパツキン数也に見せつけるように由紀生の唇を深く捕らえる。 由紀生は、硬直しているパツキン数也をチラ、チラ、心配そうに窺いつつ濃厚キスにぎこちなく応える。 縺れ合う舌と舌。 唾液の糸が紡がれては途切れ、またねっとり、出来上がる。 「ん……っ……っ……かずや……」 とろんとした目で呼号した由紀生に笑いかけ、数也は、嬌羞を孕んだ父親から視線を逸らせずにいるパツキン数也を横目で見据えた。 「オヤジに恋人なんていねぇよ、クソガキ」 「……」 「いるのは家族だけ。他は必要ねぇ。なぁ、オヤジ?」 どくん、どくん、ヤンチャが過ぎる我が子の鼓動を仮膣で痛感しながら由紀生は頷いた。 禁断スキンシップに溶けかけた眼差しで数也を、パツキン数也を、交互に愛しげに見つめた。 「お父さんのぜんぶ……カズ君のものだよ……?」

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