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4-父の日

今日は父の日。 数也にとってクリスマスよりもお正月よりも重要な大イベントの日だ。 「カズ君、今日はお休みなんだね」 当たり前だ、一か月前から有休申請してたんだ、こんな大事な日に仕事に出て堪るか。 「今日、父の日だろ」 「うん」 「なんでもオヤジの欲しいもん買ってやるよ」 朝の食卓、食事を済ませてのんびりコーヒーを飲んでいた由紀生は息子の言葉にそれは嬉しそうに微笑んだ。 「その言葉だけで十分だから、カズ君」 「あのなぁ」 「うん、でもお父さん……その、えっと」 「はっきり言えよ」 「えっと……カズ君と日曜日の街、ぶらぶらできるだけで……えへへ、嬉しいかな」 「……」 こいつ本当に四十路か。 かくして、らぶらぶ恋人気分でおやばか父と街へ出かけようとした究極ファザコン息子。 しかし甘い気分は脆くも崩れ去ることとなる。 「あれ、主任!?」 なんと由紀生が勤め先で面倒を見てやっている爽やか部下と運悪く駅で遭遇してしまったのだ。 「息子さんとお出かけですか?」 「うん。君はこれから恋人とデートか何か?」 「残念ながら、僕、只今恋人募集中の身なんです!」 なんだこいつ、「違います」で済ませりゃいいものを、わざわざ今自分はフリーです、みたいな発言しやがって。 「気分転換に目的決めずにのんびりぶらぶらしようと思って、あ、どこかラーメンおいしいとこ、主任、知りません?」 おいおい、ネットで検索すりゃー一発だろーが、いちいち上司に尋ねる内容か、それ。 「あっさり塩系でお願いします!」 「一人でお昼?」 「はい!」 「よければ自分達と一緒に来る?」 数也は我が耳を疑った。 「わぁ、いいんですか!?」 おいおいおいおいおいおい、遠慮しろよ。 爽やか通り越してゲスか、この部下。

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