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パラレル番外編-2

最近になって起こり始めた異変はそれだけじゃなかった。 「飯、なに?」 会社が休みの日に夕食を作っていたら背中に抱きついて、作り終わるまで、そうしていたり。 「これ、おもれぇ?」 ソファに座ってテレビを見ていたら隣に座って、やたら密着してきたり。 「今日の靴下、これか?」 自分で履けるのにわざわざ靴下を履かせてきたり。 「親孝行してるんじゃないですか!?」 お昼休み、定食屋でカツ丼をご馳走していた部下に相談してみたら、その返事。 「今まで苦労かけた分、素直になれなかった分、甘えてるみたいな!!」 頬にご飯粒をくっつけて爽やかに笑う部下を前にして由紀生は「そうなのかも」と納得し、ちょっと一息ついて、食事を続けようとしたのだが。 「もしかしたら自立するつもりなのかもしれないですね!」 「え?」 「おうちを出て、一人暮らし、始めるのかも!」 一人暮らし。 カズ君が、家を、出ていく。 思ってもみなかったことだった。 だが、よく考えてみれば、当たり前のことだった。 知り合いのお店はそんなに遠いところじゃないけれど、一人暮らし、あり得る話だ。 そのときはちゃんと送り出してあげないと。 さみしいけれど、うん、会えなくなるわけじゃないし。 きっとお父さんの血を飲みに帰ってきてくれる。

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