17 / 134
パラレル番外編-2
最近になって起こり始めた異変はそれだけじゃなかった。
「飯、なに?」
会社が休みの日に夕食を作っていたら背中に抱きついて、作り終わるまで、そうしていたり。
「これ、おもれぇ?」
ソファに座ってテレビを見ていたら隣に座って、やたら密着してきたり。
「今日の靴下、これか?」
自分で履けるのにわざわざ靴下を履かせてきたり。
「親孝行してるんじゃないですか!?」
お昼休み、定食屋でカツ丼をご馳走していた部下に相談してみたら、その返事。
「今まで苦労かけた分、素直になれなかった分、甘えてるみたいな!!」
頬にご飯粒をくっつけて爽やかに笑う部下を前にして由紀生は「そうなのかも」と納得し、ちょっと一息ついて、食事を続けようとしたのだが。
「もしかしたら自立するつもりなのかもしれないですね!」
「え?」
「おうちを出て、一人暮らし、始めるのかも!」
一人暮らし。
カズ君が、家を、出ていく。
思ってもみなかったことだった。
だが、よく考えてみれば、当たり前のことだった。
知り合いのお店はそんなに遠いところじゃないけれど、一人暮らし、あり得る話だ。
そのときはちゃんと送り出してあげないと。
さみしいけれど、うん、会えなくなるわけじゃないし。
きっとお父さんの血を飲みに帰ってきてくれる。
ともだちにシェアしよう!