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パラレル番外編-3

金曜日だった。 数也からメールで「夜、用事があって出てくる」と伝えられていた由紀生は残業を終えると外食し、夜十時過ぎに帰宅した。 数也はまだ帰ってきていなかった。 しょんぼり……。 正にそんな効果音がつきそうな様子の由紀生、一先ずお風呂にはいり、それでも帰ってこない一人息子にまたしょんぼりし、ソファに力なく腰掛けた。 缶ビールをプシュッと開け、一口飲み、飲み続ける気が起こらず、テーブルに置く。 カズ君、カズ君。 立派になってくれて嬉しいけれど。 このまま遠くに行ってしまうのかな。 「おとぉさーん」 「どうしたの、カズ君?」 「あの猫と猫、なにしてるのー?」 「あっ!」 「あの猫と猫、なにしてるのー? くっついて、なにしてるのー?」 「えっとね、えっと」 「うそ、ぼく、知ってる、交尾でしょ」 「えっ」 「ごめんね、おとぉさん、からかってごめんね」 「おい、オヤジ」 「ひどいよ、カズ君、お父さんからかって……」 「は? おい、風邪引くぞ?」 ソファで転寝していた由紀生はいつの間に帰宅していた数也の呼びかけに目を覚ました。 寝惚け眼で目頭を擦りながらすぐそばに立っていた数也を見上げる。 「あ、おかえり、カズく……え?」 「ただいま、オヤジ」 黒髪、ヒゲなし、じゃらじゃらなし。 ノーマル高校生姿の数也に由紀生は何度も瞬きした。 「コンビニの短期バイト面接受けてきた」 「え?」 「その前に知り合いの美容師に髪染めてもらって、ヒゲ剃って、面接終わって、知り合いと飯食ってきた」 「……カズ君、知り合い多いんだね」 中学時に髪を染め、それからずっとカラーリングを続けてきた数也、黒髪になるのは久しぶりだ。 久しぶりだからかな、何だか、どきどきする。 「テストは赤点とらなきゃクリアだし、本番前にちょっと社会勉強しとくかと思って」 そんな話、全く聞いていなかった由紀生は内心しょ気ながらも、笑顔を。 「受かるといいね」 「まぁな」 「じゃあ、お父さん先におやすみするね、明日の朝ごはん用にパン買ってきてるから、先に起きたら好きなの食べていいから、じゃあ、おやすみ、」 リビングから自室へ去ろうとした由紀生の手首をぱしっと掴んだ数也。 振り返った父親に半吸血鬼の息子は欲求する。 「のませろ」

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