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パラレル番外編-6
由紀生の息子である数也は吸血鬼の血を引いている。
数也の母親が吸血鬼だったからだ。
そんな彼女とは当の昔に離婚し(性格不一致のため)、由紀生は男手一つで数也を育ててきた。
『ん……もうちょっと、オヤジ』
自身の血を犠牲にしてそれはそれは甘やかしてきた。
おかげで、その結果。
『今、交尾してんのな、俺とオヤジ……ッ』
禁断近親えっちにまで至ってしまった。
親ばか父は究極ファザコン息子にとことん激甘のようだ……。
「おかえり、カズ君」
普段は残業で自分より帰宅が遅い由紀生に出迎えられて高校生の数也は珍しく驚いた。
「今日、半日休みとってたから。今日はお父さんが腕によりをかけて晩ごはん作るね」
腕に何をかけるんだ? と聞き返そうとした数也だが、まぁいいや、オヤジと久々に晩飯だ、と内心上機嫌で手洗い・ウガイを済ませてキッチンを覗いてみた。
「腕によりをかけてカレー作るね」
子どもじみた発想の由紀生、ワイシャツを腕捲りして水玉エプロンを身に着け、実に危なっかしい手つきでジャガイモの皮を剥いていた。
「オヤジ、手伝うか」
「駄目だよ、いつもカズ君に任せっきりだし、今日はお父さんが全部やるから」
「この分だと食べ始めるの遅くなりそうだな」
卒業後は知り合いの飲食店に就職する予定であり、パツキン、顎にぶしょーヒゲというオラオラなナリから黒髪、ヒゲもさっぱり剃って外見を整えていた三年生の数也。
『オヤジ、あと二回』
由紀生と禁断えっちに励むようになってからは吸血行為を控えていた。
人間の食事をとって栄養をとることだって特に問題ないのだ。
一滴の血で三食分のエネルギーを補うことができるが「人の血は吸ったらいけないの」という父親からのお咎めもあり、愛する肉親以外の血は激マズで元々他人相手の吸血行為に興味がなく。
血を吸わずとも由紀生と性的に密着できるようになった今、数也は実に人間らしい食生活を送っていた……のだが。
「あッ」
由紀生がやっちまった。
目をやれば片手で片手をかばっていて、指の狭間に覗くは……数也にとって甘味たっぷり病みつき必須な芳醇たる鮮血雫。
それまで平静でいたはずの数也は釘付けになった。
「痛い」と呟いて指先をフゥフゥしている由紀生の四十路男らしからぬ可愛さに胸と喉を疼かせた。
「えっと、まずは水で綺麗に洗わないと、それから消毒して」
「洗うとかもったいねぇ」
「あっ……カズ君……」
水を流して血を落とそうとした由紀生を有無を言わさず抱き寄せた数也は。
細い手首をとって自分の口元へ誘うなり、久し振りのご馳走にありついた。
浅い傷口に滲んでいた血をゆっくり舐めとる。
貪欲な舌で細やかに念入りにすすり上げる。
言葉もなしに夢中になった。
瞬く間に虜となって甘い甘い由紀生に溺れた。
「お父さんの血……そんなにおいしいの?」
背後でまな板上にジャガイモやニンジンを放置して、水を流しっぱなしにして、由紀生は自分の血をじっくり味わっている我が子に尋ねてみた。
目を閉じて集中していた数也はおもむろに瞼を持ち上げた。
薄目がちに由紀生を見下ろし、自分よりも華奢な指にねっとり舌を絡ませて、骨張る間接に乱杭歯をそっと添えた。
「ッ」
「愚問、オヤジ」
「ッ……お父さん、ご飯の準備しないと、次の日になっちゃう」
「どんだけ時間かける気だよ」
名残惜しそうに由紀生の指先から離れた唇は、次に、僅かにヒクついていた父親の唇に標的を定めた。
「ン……っっ」
夕暮れ刻、キッチンカウンターの内側で制服姿の息子により強く抱きしめられる。
自身の血の残り香を引き摺る舌に口内をたっぷり溺愛されて、ビク、ビク、腰が揺れてしまう。
「ン、腰揺れてんな……ヤラシ」
「ッ、カズ君が……ヤラシイから……」
「オヤジがそうさせんだろ」
唾液が行き来するような不埒なキスに由紀生は腰ビクが止まらない。
体が勝手に反応して、ついつい揺れて、真正面に位置する数也の股間に股間がぶつかってしまう。
「……オヤジ、誘ってんのかよ」
「えええ……っ? そんなつもりじゃ……」
「俺はキス止まりのつもりだったけど。オヤジがしてぇなら仕方ねぇな」
数也は細腰に絡みつかせていた両腕を一端解いた。
下は家着に履き替えていた由紀生の尻を服越しに撫で回す。
自らも腰を揺らして股間同士の摩擦を強める。
「カ、カズ君」
「オヤジ、勃起した?」
「してないっ」
「へぇ……? 俺は十分、したけどな」
本当、カズ君の硬くなったの、お父さんのアソコに当たってる……。
より過激になっていくキスに頭の奥が痺れて、いつの間に下顎まで濡らして、不健全極まりない家族スキンシップに由紀生もまた発熱していく……。
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