214 / 267
第215話
探しに行きたい気持ちをグッと堪えて、仕事を続けるが何も手につかない。
ずっと上の空で全然集中できなかった。
その様子を見た成宮は、はぁ、と深いため息をついて困り顔で言った。
「俺が言い訳しておくから、明日は休んでいい。だけど今日の分の仕事は片付けてくれ」
「成宮……」
思わぬ言葉に少し驚いていると、成宮は苦笑した。
「もし俺がアリスの立場なら、静止も聞かずに真っ先に飛び出して行ったと思う。 俺が居なくても会社は回るからだ。だけどお前が居ないと会社は回らない。辛い選択だと思うが、耐えて欲しい」
「……ふん、超特急で仕上げるっての」
正直、今すぐ仕事を投げ出したい気持ちでいっぱいだが、それをしてしまうと会社に泥を塗ることになる。 取引先からの信頼も失うだろう。 従業員たちにも心配を掛けてしまうことになる。
これは社長である神楽坂 有栖としての指名なのだ。
「どうか無事でいて……白雪…… 絶対に迎えに行く」
今は祈ることしか出来ないのがもどかしい。
そして俺はいつもの倍以上の速さで仕事を終わらせた。
現時刻は夜の7時。 白雪が7時まで出かけることはほぼ無い。もし遅くまで出かけるなら、俺にメールしてから出かけるだろう。
急いで家に帰り、成宮が鍵を閉めてくれたドアを開けて中に入る。この時点でまだ鍵がかかっているという事は、白雪は帰っていないという事だ。 一応家の中も確認したが、真っ暗で、洗濯物も干しっぱなしだった。
頭が真っ白になって、床に崩れ落ちた。
白雪……ごめん……
ともだちにシェアしよう!