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第239話
家に帰ってからもイライラが消えなくて、ソファに丸まり毛布を被っていた。
そんな僕をアリスはそっとしておいてくれた。
今は有難い。 何も喋りたくない気分だったから。
リンは何を考えているのか。 確かにアリスは美形だし、一度は付き合ってみたい。
しかし相手がリンとなると、そうも行かない。
ただ単にアリスが欲しいのか、それとも僕の大切な人を奪うのを楽しんでいるのか。
リンに恨まれることは何もしていないけれど…
僕の事をあまり良く思っていなかったらしい、と噂で聞いた事がある。
店長が僕を溺愛しているから、と。
店長と僕はいわゆる家族みたいなものだし、溺愛と言うか、親の愛みたいな感じだった。
傍から見たら溺愛に見えなくもないけれど、まったくの別物だ。
アリスは絶対に渡さない。
僕の大切な人。
僕を愛してくれた人。
「アリス…」
「うわっ!びっくりしたぁ」
キッチンで夕飯を作っているアリスに背後から近づいて、ガバッと抱きついた。
今日の夕飯はパスタだ。美味しそう。
「お腹すいた」
「もう少しで出来るからね」
「うん」
ぎゅうっとアリスのお腹から手を離さない僕を見て、優しく頭を撫でてくれた。
安心する、心がぽかぽかする。
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