242 / 267
第243話
バイト帰り、中々帰る気になれなくて街をフラフラと歩いていた。
今日はアリスは遅くなるらしいが、何となく家に帰りたくなかったのだ。
はぁ、とため息をついて、近くにあったベンチに座った。
流石に歩きっぱなしはしんどい。
すると、衝撃の現場を目撃してしまう。
「な、んで…?」
なんで、なんで、リンとアリスが一緒に歩いているんだ…
しかも出てきた店は婚約指輪を専門的に取り扱っているジュエリーショップ。
目眩がした。
「ま、って…」
なんで…
追いかけたい、だけど足は動かなくて。
2人はネオンの光に包まれて消えていってしまった。
きっと愛想つかされたんだ。迷惑かけて、面倒なガキ。
素直じゃなくて、可愛げもない、育ちも悪い。
そんな僕より、リンの方がいいに決まっている。
諦めた方がいいのかもしれない。
でも…
「好きなんだよぉ…ばか…」
震える声で呟いたその言葉は、騒がしい街に飲み込まれていった。
ともだちにシェアしよう!