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第246話
仕事を終え、家に帰らずに真っ直ぐ俺の向かった先は、ジュエリーショップだった。
ここは指輪を専門的に取り扱っている有名なお店だ。
なぜ俺がそんな所に行くかと言うと、愛を形にする為だ。
事前にサイズ、デザイン等の相談はしていた為、今日は取りに行くだけ。
白雪はあまり高そうなモノは受け取らないと思い、シンプルなデザインにした。 あの指輪が白雪の左手に嵌ると思うと、つい口元がニヤけてしまう。
会社を出て直ぐに、クイッとスーツの袖を引っ張られ振り向いた。
そこには、ニッコリと可愛らしい笑顔を浮かべて立っている青年がいた。
「こんばんは! 俺の事覚えてますか?」
「あ、こんばんは。 確か、白雪の同僚の…リンくんだっけ?」
「はい!覚えていてくれたんですね!嬉しいです!」
ニコリと嬉しそうに笑う姿は天使のようだ。
見た目はね。
本当はそんな事1ミリも思っていないのだろう。 ただ自分のモノにしたいだけ。それ以外の感情はないように見える。
俺の事は別に好きなわけじゃないらしい。
きっと金づるとしか思ってないのだろうな。
まぁ俺の事が好きと迫ってきても、俺が選ぶのは白雪だけど。他には興味ない。
「ごめんね、急いでいるんだ」
「どこに行くんですか?俺も一緒に行きたいです」
「ダメだよ」
スルッと腕を絡めとって、体を強引にくっつける。大した演技力と行動力だ。
だけど、これから行く場所に一緒には連れて行けない。
誤解されては困るし、白雪にはナイショにしているんだ。
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