22 / 267
第22話
ヤバイ、と思った時にはもう遅くて、その男はユキちゃん目がけて走ってきた。
手にはナイフを持っていて刃先をこちらに向けて全速力で走ってくる。
「ユキちゃん逃げて!」
「や、やめ...!」
ユキちゃんを庇うように前に立てば、お腹あたりにものすごい痛みが走った。
その部分からは真っ赤な血が溢れていて、あぁ、刺されたんだと思った。
すごく痛いのに、冷静にそんな事を思っていた。
刺された部分が熱い。
じくじくと痛んで、意識が遠くなりはじめた。
「アリ......ス.........アリス!!!!アリス!!やだ!死なないで!!!」
「ゆき、ちゃ...!後ろ!」
ユキちゃんが俺を抱き抱えて大粒の涙を流しながら必死に名前を呼んでいた。
その後で、ナイフを振りかざした男が立っていたのだ。
「ユキくんは、俺のもの」
そう呟いて、ナイフを高く上げた瞬間、男を警察が取り囲んだ。
騒ぎを聞きつけて来た人が連絡してくれたんだろう。
もう、安心だ。
急に眠くなって、意識が途絶えた。
その間もユキちゃんは俺の名前を必死に呼んでいた。
ともだちにシェアしよう!