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第2話 - 04
先輩への挨拶を済ませても、いつもより早い下校だった。時間が違うだけで、見慣れたはずの通学路は少し違って見える。しかしどんよりと空は曇っていて、湿った空気は肌に纏わり付くようだ。憂鬱な気分は晴れない。
手元の住所とスマホを頼りに、見慣れた景色を右に曲がる。そこから少し歩けば、街は途端に余所余所しくなった。どこを見ても見慣れない家が並んでいる。鈴木の家は僕の家に近いが、僕が滅多に行かない所にあるらしかった。
きょろきょろと見回しながら歩いていると、やがて紙に書かれた住所へと辿り着いた。
「ここ……かな?」
住所と表札を確認して、目の前の家が間違いなく鈴木の家であることを確認する。曇り空を背景に佇む家は二階建てだが、どの部屋もカーテンで閉め切られていた。中は伺えそうにない。家の外にも出ていないのか、郵便受けはチラシで溢れかえっていた。最悪郵便受けに突っ込んで帰ろうと思っていたが、仕方がない。僕は深呼吸して、インターホンを押し込んだ。
「……出ないな」
しかし、待てど暮らせど鈴木は出てこない。インターホンに答える声もしなかった。留守だろうか、もう一度押しても反応はない。
「……鈴木ー?」
プリントを渡してさっさと帰りたい。渡せずに鈴木の家に何度も通うなんて、絶対に嫌だ。そういうことばかり考えていた僕の頭に、引き返すという言葉は浮かんでこなかった。僕は無意識のうちに玄関のドアレバーに手を掛ける。それを下げれば、ドアは引っかかることもなく開いた。
「……鍵かかってないじゃん」
拍子抜けするくらい簡単に開いてしまったからか、僕はまずいことをしていると思う暇なく中を覗き込んだ。鈴木の家は真っ暗で、誰も居ないようだ。その事実に、ふぅと小さく息を吐く。
「……僕、不審者じゃん……」
そこでやっと自分の行動に気付いて、軽い自己嫌悪に襲われた。二度も三度も来たくはないが、居ないなら引き返すしかない。扉を閉めようとした時、微かな物音が僕の耳朶に響いた。
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