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第2話 - 05
「!」
誰もいない家から物音。その事実に薄ら寒いものを感じ、思わず身震いする。無人の家にいる人といったら、つまり強盗かなにかだ。逃げようとも思ったが、聞いてしまった以上このまま帰るのも寝覚めが悪い、気がする。
「……」
再びがた、という音がして、僕の思考は中断させられた。鈴木の家とはいえ、やはり強盗であれば通報するべきだ。これほど自分の正義感の強さが恨めしいこともなかった。帰ったら首でも吊って死のう。死んで、責任感がなくて嫌なことは嫌だと言える人間に生まれ変わるのだ。僕はそんな人間を一人、知っている。
「……鈴木、みたいな」
僕はそんな情けない決意で勇気を奮い起こすと、何があってもいいようスマホを握りしめて、ゆっくりと鈴木の家へと踏み込んだ。
* * *
どうやら物音は二階からしているらしい。時々がたがたと言うものだから、すぐに判った。足音を立てないようにゆっくりと階段を登る。鈴木の家は意外と広く、二階には部屋が三部屋あるようだ。その中でも、階段に一番近い部屋が音の発生源らしかった。その部屋から、がた、と聞こえる度に心臓が飛び跳ねる。
「……」
声を出さないよう細心の注意を払いながら、僕はその扉のドアレバーをそっと捻る。暫く待ってみたが、反応は特に何も無かった。気付かれていない。僕は更に扉を押して、隙間から中を覗き込んだ。
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