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第2話 - 02

   * * *  鈴木の家に行くために潰れてしまうが、今日は本当は僕の所属する生徒会議会の日だった。参加は難しいが、せめて先輩の顔を見てから鈴木の所へ行こう。僕が本当に好きな、芳野先輩の。  そう思った僕は、職員室のある1階から伸びる渡り廊下を渡って、『生徒会』のプレートが燦然と輝く扉の前に足を運んでいた。 「……よし!」  この扉の向こうに芳野先輩がいる。そう思うだけで、鼓動は乱れる。扉を少し開いて中を覗くと、ふわりとコーヒーの香りが鼻を掠めた。先輩がいつも飲んでいるコーヒーだ。  先輩は生徒会長席に座って、頬杖を付きながら書類に目を通していた。それを見ると、僕の鼓動はより大きく、早くなる。まるで心臓を素手で鷲掴みにされているようだった。  窓から差し込む夕陽を反射してきらきらと光る、烏の濡れ羽のような黒髪。照らされた横顔はあまりにも綺麗だ。その目線は厳しく、手元の書類を睨みつけている。きゅ、と引き結ばれた唇に、不機嫌そうに顰められた眉。――同じようなことを、つい一週間前に考えた気がする。それに気が付くと気分が落ち込んで、そっと扉から身体を離した。  瞬間、世界がぐらりと揺れた。 「!」  何かと思った時には目の前の物にスローモーションのようなブラーが掛かって、やがて視界いっぱいに地面が広がる。強かに膝を地面に打ち付けて、やっと僕が倒れたということに気が付いた。  顔を上げると、先輩は驚いたように大きく目を見開いて僕を見ていた。首を捻って後ろを見れば、そこには茶色の猫っ毛をした少年が立っている。頬と鼻の頭に絆創膏を貼った、つり目の気の強そうな少年。彼はふん、と鼻を鳴らして、僕を見下ろしていた。 「すんません、入るのに邪魔だったんで。蹴りました」 「……」 「そんな派手にコケるとも思わなかったし。別にさいとー先輩だからいいんスけどね」  悪びれるどころか更に悪態をつきながら、彼は倒れる僕を避けるようにして会室に入ってきた。あまりのことに何の言葉も出てこない。先輩は大きくため息を吐いて、困ったような顔で僕を見ていた。その視線に僕は急いで立ち上がると、膝の埃を払う。  

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