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 彼の指と腕、そして唇は我武者羅だった。焦りと熱、そして欲望。私は時々彼の腕を導き、指を絡めた。互いの熱をさぐり触れ、手のひらに感じる確かさに震えた。  私は彼に、彼は私になりながらお互いに向き合う。触れ合う体温と熱、滑る汗。快楽を追うのとはまったく別の行為。  私達は夢中になりながら息をあげた。とうとう引き裂かれるような痛みとともに彼を受け入れた時、頬にポタリと滴を受ける。彼は子供のように泣きじゃくっていた。 「どうして……どうして」    鈍い痛みをやりすごすため力を抜く。いくぶん息がつけるようになり彼の頬に手をのばし涙を拭ってやる。 「手にしたのに離さなければならない。せっかく生まれたのに死ななくてはならない。自分の人生なのに選べない!学問の問題には必ず答えがあるのに、いくら考えても答えに辿り着けない。誰も……答えをくれない」  じわりと瞼が濡れる。どれだけ自分を守る鎧を身に纏ってきたのだろう。お国のためだと言い聞かせ、これが自分の命運だと受け入れた姿勢を保ち続けるのに、どれだけの……。  全裸で汗ばみ私の中にいる彼があまりにも悲しい。そして愛おしい。 「この世は答えのないことのほうが多いのだよ」 「でも……でも」 「だから答えはない。それが答えだ」  彼の腰に自分の足を絡めて引き寄せる。 「あ……」 「君が中にいる……ここには私達しかいない。そうだろう?それだけでいい……今はそれだけで」  左右の手のひらを彼の臀部に置き強く押し付ける。 「動いて。私を感じて……私は君を感じたい」  緩やかに始まった抽出が熱を帯び始め、汗ですべる体をしっかり抱きしめる。答えはない、選択肢もない、なにもかもがない。でも私と君は此処にいる。それだけでいいじゃないか……せめて今だけは。 「ああ……もう」 「我慢しなくていい……から」  深い口づけは呼吸を奪う。何もかも奪えばいい、与えられるものすべてを君に!    崩れ落ちてくる身体の重みを受け止めた時、堪えられず零れた涙がつたい耳を濡らした。

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