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第4話

「かいざは、もののふになる気はないか」 八郎はおもむろにカイザへ問いかけた。 片手で串をとって焼けた魚をくわえながら、何かを考えているようだった。 「もののふとは、何ぞ」 きょとんとした表情を浮かべて、カイザは火にくべた魚をひっくり返しながら問い返す。 「わしのように、いくさばで戦う者のことだ」 「はちろうは、戦うのか」 「腕がこんなでなければな、わしの弓の術はやまと一ぞ」 胸を張って自慢気に語る様子に、カイザは目をしばたたかせて、だらりと下がった腕を見やる。 「おれらはけものは罠にかけて捕るが、はちろうは弓で射るんか」 「どんな遠くからでも当てる自信はあるぞ」 魚を丸呑みにするようにして、次々に喰らうとむしゃくしゃと力強く咀嚼して平らげていく。 「格好良いなあ。おまえの腕が治ったなら見てみたいぞ」 子供のように嬉しそうに話にのってくるカイザに、八郎は何度も頷いて右腕をぐいと握る。 「自分では、痛みに加減しちまってな。よう嵌められん」 あまり痛みが酷いと力がどうしても出ないのだと、苦笑を浮かべる八郎の腕をカイザはそっと握る。 「思うように動かせんのは不憫じゃな」 弓を射る勇姿を見たいのもあったが、動かせないという辛そうな表情に同情を禁じ得ない。 「強きもののふならば、試練に耐えねばならんのだけどな」 まだまだ鍛錬が足りぬと首を横に振って呟く様子に、カイザはその掌をそっと撫でる。 「おれが力を入れればはまるかもしれん。痛いじゃろが、ためしてみるか」 「ならば頼もうか。かいざは、力があるようだからな。だからもののふに向いている」 八郎の言葉に火を消すと、茣蓙の上に寝ろと告げてとんとんと茣蓙を叩く。 「いくさは、人を殺し合うと聞いた。おれには向かぬと思うが」 「そうだな。おまえの気性にはあわぬかもな」 茣蓙に寝転び動かない腕をカイザにとられると、ごくりと息を飲む。 「大事に思うもののためならば、仕方がなしとは思うが」 引き上げるようにして、腕の付け根を押さえて骨をぎぎぎと移動させる。 「ッあーーッく、ぐぅッうッ」 肉が千切れるかのような痛みに、目の前に火花が飛び散り、奥歯を噛むが呻き声が漏れてしまう。 「いた、いか?我慢せえ、もうすこしで、入りそうじゃ」 左腕でバンバンと茣蓙を叩きながら、脂汗を垂らして八郎は首を横に振る。 「ーーっぐッーーくっ」 「だいじょうぶ、もう、はまる、から」 カイザもグッと力をこめて、付け根の切掛けあたりに骨を押し上げて押し込む。 「はまっ、た」 はあはあと荒い呼吸を繰り返し、ごろんと仰向けになった八郎の狩られた獲物のような無防備な表情に、カイザはぞくりとしてこくんと息を飲んだ。 「かいざ、ありがとう」 腕を軽くあげて、まだ思うようには動かないのか眉を寄せつつも、嬉しそうに起き上がった八郎に、カイザは何故か視線を逸らした。

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