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第8話
拒絶の言葉に空気が一瞬固まるが、気を取り直したように八郎はカイザを見返す。
「こんな狭い島におのれはずっといるのか」
「おれは、まだ、島に恩を返してはいない」
静かに語るカイザに、意味がわからないとばかりに八郎は首を傾げた。
嫁すらもたされないカイザの状況は、虐げられているとしか思えない。恩返しなどもっての他である。
「とがびとは、おれのような鬼が番をしないと、悪さをする。悪さをしてみやこを追い出されたのだから、危険だ。おまえみたいなやつもみやこからくることもあるなら、おれは島を出たりしない」
八郎の腕から手を外して、島の人間たちを恨んだことはないと、カイザは繰り返した。
「じゃあ、この島に恩返しが終わったら……わしと一緒に来てくれるか。わしは、綺麗なおのれが気に入ったのだ」
八郎はこの島への恩返しを手伝うからと、カイザに告げて、視線を向ける。
まるで天の宝を欲しがる子供のような曇りのない瞳でカイザは見つめられて目を見開く。
この姿を見る人々がいつも浮かべる恐怖や、異物を見るような奇異な視線ではない、その純粋な感情に体が震えた。
「恩返しが終わることなどないと、言ったら」
「意地の悪いことを言うなあ。ならば、おのれの気が済むまで付き合うまでよ」
腕をとって真っ直ぐに目を見つめ、だからわしのものになれと命じる八郎に、カイザは思わず頷いていた。
「物好きなヤツもいるものだな。鬼を怖がるどころか、きれいなどと」
「宋国からの船に乗ってくる黄金の宝物よりおのれの髪はきらきら光るし、宝玉よりもおのれの瞳は深い海の色じゃ、ずっと手元で見ておりたい」
八郎はカイザの腕を引いて背中に巻き付け、再度自分のものになれと告げてその頬を撫でた。
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