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※第9話

「はちろ、う、後悔していないか」 10年近く抱き続けてきた躰は、奥まで苦もなくカイザを飲み込み足りないとばかりにうねりを繰り返している。 四つん這いのまま薄目を開き、八郎は首を横に振って甘く蕩けた吐息を漏らす。 重税に苦しむ島の人々の生活にみかねた八郎は、税をとりたてる役人たちを追い出し、みやこからやってくる兵達を返り討ちにしてきたが、とうとう追い詰められてしまっていた。 追い討ちをかけてきた船に弓を射掛けて沈めたが、この島に上陸されたならば、島が戦場になるのは必至だった。 奥まで押し入った躰を揺らしながら問いかけると、顎先を僅かに引き上げ振り返って、掠れた声で呟く。 「っ、奴等のねらいは、わしじゃからな……。かいざ、お前は、島のやつらを連れて島の南にのがれろ」 神嵐は年々酷くなるのに、国司はいつもと変わらない税をとりたてるのに腹もすえかねて国司の手を叩き斬ったのは、自分である。 八郎は後悔はしていなかった。 「ん、っふ、おのれと、別れるのは……つらい、がな」 最後にちぎりを交わして欲しいとねだった八郎の表情には、どこか覚悟を感じて、カイザは彼が本気で最後だと思っているのが分かった。 彼が守りたいと思っていたものを、八郎は命を懸けて守ろうとしてくれたのだ。 「はちろ、う、ありがとう、ありがとう…………」 堅い躰を抱きしめ貫きながら涙が零れ落ちるのもそのままに、背筋に噛みつき胎内へと欲を吐き出す。 彼を忘れぬよう感じようと、カイザは朝までその身体を離さなかった。 「かいざ、夜が明けた、また船が島に来るだろう」 ゆさゆさと身体を揺らされてカイザが目を開くと、既に目を覚ましていた八郎はどこかで身を清めてきたのか、さっぱりと衣を纏っていた。 「綺麗な、髪だ」 名残を惜しむ様にカイザの髪を撫でて、身体を立たせると、外で摘んできたのか大輪の百合を手にして、カイザの髪に挿す。 「はちろう」 「おのれとみやこには行けなかったが、一緒に戦えて、わしは幸せだった」 満足そうに野性味のある笑いを浮かべると、彼の背を強く押して扉を開けて強い力で押し出す。 「さらばだ。かいざ、そのまま振り向かずに、島の南へ走れ」 絶対に戻るなと告げた八郎の表情を見ることも叶わず、ばちんと閉められた扉と、眼下の海に幾十もの船が見えて慌てて住人達の住む村へと駆け出した。

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