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7 口紅を塗っていなければ☆
部屋に入ると上着を脱いで時計とネクタイをはずした。
吉川の方はやはり今回も女装のままのつもりらしく、手荷物を置いた後は立ったまま俺の方を見ている。
わざわざこのバーに来て着替えてメイクまでしてもらっているのだから、女装のままなのは当然なのだが、吉川が服をきたままではあの筋肉を堪能することが出来ないので、少し惜しいなと思う。
「しかし化粧ってすごいな。
眉と目だけでこんなに印象変わるのか。
あ、顔も塗ってるんだっけ?
見た感じは全然わからないけど」
言いながら吉川の顔をちょっと触ってみる。
実際に触れてみると、確かに少しべたついていて、何か塗っているのがわかった。
「えっ?」
そうやって確かめていると、ふいに吉川の顔が近づいてきた。
驚いて思わず吉川の顔から手を離すと、吉川は逆に俺の頬に手をかけて引き寄せ、そのまま唇を重ねた。
「口紅を塗っていなければ、キスしてもいいんですよね?」
女装したままのくせに、欲情した男の色気を放 っている吉川に見とれていると、急にその顔がへにょっと情けなく歪んだ。
「やっぱり駄目でしょうか……口紅がなくても、キスをするのは」
すがるような情けないその表情は妙にかわいく思えて、俺は自分の方から吉岡にキスしてやった。
「いいよ。
好きなだけしろ」
「……はいっ!」
俺が許可したとたん、吉川は「よし!」と言われた犬のように飛びついて再びキスしてきた。
「んんっ……」
明らかに余裕のないむさぼるようなキスは、興奮はするが肉体的な快感は薄い。
落ち着けというように軽く首を叩き、差し込まれた舌先を軽く噛んでやると、吉川はびくっとして舌を引っ込めた。
その舌を追いかけるように、今度は俺の方から舌を差し入れて絡めると、吉川の方もそれに応えてくる。
その感触を味わいながら、スカートの中に手を入れてストッキングに包まれた太ももをなでる。
そうすると吉川はハッと気付いたように一瞬動きを止め、そしてすぐに俺の服を脱がせ始めた。
あいかわらず吉川は片手でボタンをはずすことが出来ないらしく、せわしなく両手を動かしているが、それでもキスはやめようとしない。
そうしてシャツのボタンを全部はずし、ベルトをはずしてスラックスを落としたところで、ようやく吉川は唇を離した。
中途半端にひっかかった服と靴下を自分で脱いで、ボクサーブリーフだけになった俺は自分からベッドに上がる。
仰向けに寝転んだ俺に覆いかぶさってきた吉川は、ちゅ、と音を立てて耳に口づけた。
そのまま手は体の先をなぞりつつ、舌は熱心に耳を舐め続けている。
「……ん、そこ……」
感じたところを口に出して教えれば、吉川は期待に背くことなく熱心にその辺りを舐めてくれる。
その間に俺の方は、吉川の背中に手をまわす。
服の上からとはいえ、着ているのは薄いブラウスだから、それなりにその感触を楽しむことは出来た。
筋肉の張りを楽しみつつ、ブラの線をなぞってみたり、脇腹にまで手を伸ばしたりして少し遊んでいると、吉川は「くっ」と小さな声を上げて俺の耳から舌を離した。
そのまま吉川の唇は首筋をたどり、お返しだとでもいうように脇の下をぺろりと舐めると、乳首へとたどり着いた。
「……っ、ふっ……」
耳以上の熱心さで乳首を舐められ、ちゅくちゅくと音を立てて吸われ、あいている方の乳首は指でいじられ、俺は徐々に吉川の背にまわした手を動かす余裕をなくしていく。
「……ヨシ、お前、も、しつこい……」
いいかげん耐えられなくなって文句を口にすると、吉川はようやく顔を上げた。
「だって、この前は口を使えなかったから……。
本当はハルさんのこと、耳も胸ももっと他のところも、全部全部舐めたかったのに、我慢してたから……」
「舐めたいって……お前なー……」
ある種変態的な欲望を口にする吉川にさすがにちょっとヒキ気味になった俺を、吉川は上目づかいで見てきた。
「だめ、ですか?
……舐められるの、嫌いですか?」
「……あー、もういい。
舐めたいなら好きなだけ舐めろ。
その代わり、どうせ舐めるならもっとイイところにしろよ」
そう言って反応し始めている下半身を軽く押しつけると、吉川は「はい!」といい返事をした。
俺の下着を脱がせた吉川は、現れたモノに、まるで愛しい人にするようなキスをした。
そうしてそのままソレに手を添え、ぺろぺろと舐め始める。
手と舌とを使うだけで、口の中に飲み込まれることのないその愛撫をフェラチオと言ってもいいのかどうかは悩むところだ。
けれども本人が舐めたいと言っていただけあって、その舐め方はねちっこいくらいに丁寧で、口内に飲み込まれないことを不満に思う必要もないくらいに感じさせられる。
「ヨシ、も、いい。
……そろそろ出そうだから」
射精感に襲われて吉川の肩を押したが、それはびくともしなかった。
「出してください」
そう言われて先っぽを咥えられ、そのまま一気に根本から手で扱きあげられながら、じゅっと吸われる。
「あぁっ……」
耐えきれずに放ったものを、ごくりと飲み込む音がした。
「おまっ……飲んだのかよ……」
自分でも飲んだ経験がないわけじゃないから、それが決して飲みやすいものではないことは知っている。
それなのに俺が出したものを全部飲み下した吉川は、平然としている……というだけではなく、妙にうれしそうでもあった。
「……もういいから、早く来い」
そんな吉川を見ていると、なんだか妙に照れくさいような落ち着かない気持ちになって、枕元に置かれたゴムを投げつけながらそう誘いをかけると、吉川は「はい」とやはりうれしそうな顔でうなずいて準備を始めた。
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