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11 素肌 2★
個室に入った途端、吉川にぐっと腕を引かれた。
「んんっ……」
いきなりふさがれた唇を、熱い舌が性急な様子で割り開く。
拒む理由もないので素直に受け入れると、吉川はいつも以上に熱心に舌を絡ませてきた。
強く求められる心地よさを感じながら、こちらもそれに応えるように舌を絡めて口づけを楽しんでいると、吉川の手が俺のネクタイにかかった。
もどかしげにネクタイをはずし、続けて上着とワイシャツのボタンをはずした吉川の手が、その存在を確かめるかのように俺の素肌をたどっていく。
ごく自然に、俺も同じように吉川に触れたいという欲望がわき上がり、吉川の腹辺りに手を伸ばしたが、そこで俺の手ははたと止まってしまった。
ワンピースじゃ、はだけられないか……。
いつも吉川が着ているのはスーツタイプの服で上下が分かれているので、スカートからブラウスを引き出せば、直にその腹に触れることが出来る。
けれども今日の吉川が着ているのはワンピースなので、服の隙間から手を入れることは出来ない。
脱がせるわけにもいかないし、仕方ないか。
普通の男が相手なら、触りたければ脱がせればすむ話だが、女装姿でなければセックスできない吉川のその女装のための服を、乱すだけならともかく脱がせてしまうことは出来ない。
スカートをたくし上げて触ることも出来なくはないだろうが、まあそれはもう少し盛り上がってきてからということにして、俺は吉川の背中に手を回して、ワンピースの上からその感触を楽しむことにする。
俺のベルトをはずしてスラックスを落とし、下着の上からその中のふくらみ具合をやや遠慮がちに確かめた後、吉川はようやく俺をキスから解放した。
ちなみに、確かめられるまでもなく、俺の足の間のモノはキスだけですでに反応している。
待ちきれなくなっていた俺は、吉川の手が離れた途端、慌ただしく中途半端に脱がされた服を全部脱ぎ、下着一枚になってベッドに上がった。
吉川の方はと言えば、そんな俺を見ながらなぜか難しい顔をして突っ立っていたが、俺がベッドに上がると、意を決したように、ワンピースの背中のファスナーに手をかけた。
「……え?」
吉川はファスナーを下ろすと、そのままワンピースをすとんと下に落とす形で脱いでしまった。
レースに縁取られたピンクのブラジャーとショーツ、白のストッキングとガーターベルト、白のローヒール、それに見覚えのあるハートのネックレスという姿になった吉川は、続けて背中のブラのホックに手を伸ばす。
「おい、無理するなよ」
女装姿でないとセックスできないと言っていた吉川は、今まで服をはだけることはあっても、下着姿にまでなったことすらない。
それなのに服を脱いだだけではなく、下着まで脱いでしまっては、かなり辛いのではないのだろうか。
確かにいつかは吉川も男の姿でもセックスできるようになった方がいいには決まっているが、それにしても急ぎすぎのような気がする。
「大丈夫です。
化粧もウイッグもありますし、それに、これがありますから」
そう言うと吉川は、胸元のペンダントにそっと手を当てる。
そうして、まるですごく大切な宝物を手に取った時のように優しく微笑んだ吉川の表情に、俺は息を飲む。
言葉をなくした俺をよそに、吉川は再び自分の背中に手を回してブラをはずした。
そしてそのたくましい胸をさらしたまま、こちらにやってくると、靴を脱いでベッドに上がり、俺と向かい合うように座る。
思わずその股間に目をやると、そこは全く萎える様子などなく、むしろ小さな下着から先っぽがはみ出すくらいに大きく育っていた。
「大丈夫だって、わかってもらえました?
……っていうか、むしろハルさんの方が萎えちゃったかな」
吉川が言った通りに、あれこれ心配したせいか、さっきまで反応していた俺のモノは少しおとなしくなっていた。
「ここはたぶん拗(す)ねるべきなんでしょうけど……、けど俺、嬉しいです。
ハルさんがこうやって萎えちゃうくらいに、俺のこと、心配してくれたのが」
「ってお前、何言って……」
俺の問いかけを、吉川はちょっと苦笑しただけでスルーしてしまった。
そして自分の下着をずり下げて育ったモノを出し、俺のモノも下着の合わせ目から取り出すと、互いのモノをひとまとめにして握り込む。
「……っ」
少し萎えていたモノは、吉川の熱につられるように、あっという間に固さを取り戻した。
熱く固いモノを直に感じ、その大きい手に包まれる快感を得た俺は、吉川にも同じように快感を与えようと吉川のモノに手を伸ばしかける。
けれども結局俺は、それよりももっと切実な欲求にしたがって、吉川の胸へと手を移動させた。
いつもは分厚いパッドが入ったブラジャーで覆われていたその胸をさえぎるものは、今はない。
ブラの隙間から見える部分から想像していた通りに、その胸はたくましくて固く引き締まっている。
ずっと触ってみたくて、けれども触れなかったその胸を、俺は無心になって撫で続ける。
「……そんなに好きですか? 俺の胸」
「おう。すごい好みなんだよ。
ずっと触ってみたかった」
胸を撫でる手を止めずに吉川の問いに答えると、吉川はちょっと笑った。
「それはすいませんでした。
けど、これからはいつでも触ってもらってかまいませんからね。
なんならずっと、一生でも」
冗談めかした言葉に思わず手を止めて吉川を見ると、その顔は声とは裏腹に妙に真剣な表情をしていた。
……こいつ、もしかして俺のことが好きなのか。
唐突に、俺はそのことに気が付く。
むしろ今までどうして気が付かなかったのだろうと思うくらいに、吉川が俺を見る眼差しには肉欲だけではない熱があふれている。
ずっと、吉川は女装の件で抱ける相手が少なくて、だからたまたま条件にあっていた俺とセフレになったのだと思っていた。
だから俺の方も吉川のことを気に入ってはいたが、単なるセフレとしか見ていなかったのに、こんなふうにいきなり吉川が自分に向けてくる想いに気付いてしまって、少しとまどってしまう。
けれども、そのとまどう気持ちよりも、素直にうれしいと思う気持ちの方が大きい自分にも気付く。
「どうしたんですか?
もう触らないんですか?」
止まったままだった俺の手に、二人分のモノの先からにじみ出たもので少し濡れた吉川の手が重ねられる。
「……もういい。
それよりも、お前が欲しい」
吉川の気持ちに対する答えは、俺の中にまだはっきりと存在しているわけではない。
それでも今、確実に自分の中にある欲望を口にすると、吉川はごくりと喉を鳴らした。
「下さい。早く」
直接的な言葉とともに手を離され、俺はもどかしい思いをしながら下着を脱ぎ、ローションを取って自ら後ろの準備を始める。
俺と同じく慌ただしくショーツやストッキングを脱いだ吉川も一緒に指を入れてきて、あらかじめある程度準備してあったこともあって、俺の中はすぐに挿れられる状態になった。
硬く勃ちあがった吉川のモノにゴムをつけてやり、座ったままの吉川と向かいあう形で、俺は自らの中に吉川のモノを飲み込んでいく。
「は、ぁぁっ…」
大きな吉川のモノを自分から受け入れるのは少しだけ苦しかったが、それでも全部飲み込んでしまうと、いつも通りの充足感に満たされる。
……いや、いつも通りではない。
いつも吉川が身につけている女性物の服や下着が、今日はないのだ。
まだ化粧やウイッグはつけているというものの、それでも今日は、その素肌を、体温を直(じか)に感じることが出来るのだ。
体を支えるために吉川の肩に置いていた手を背中に回し、その体をそっと抱きしめる。
高めの体温、筋肉の張り、そんなものを自分の肌で直(じか)に感じていると、それだけで体の中と胸の奥、両方から何かが湧き上がってくるような気がする。
「ハルさん……」
つぶやいた吉川の声も、心なしかいつもより熱にうかされたような陶然とした響きを帯びている。
「イイ……。すごく」
感じたままを口にすれば、吉川ののどの奥からぐっと何かをこらえるような音がして、いきなり下からずんと突き上げられた。
「わっ、…んっ……あっ…」
驚いて動けなくなったのは、ほんの一瞬だった。
すぐに俺も吉川に合わせるように、吉川の上で腰を振り始める。
互いに抱きしめ合って、触れ合った胸の間で、吉川がつけている小さなネックレスが動く。
そのひんやりとした固い感触にすら快感を覚えつつ、俺は吉川との行為に夢中になっていった。
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