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番外編 懐かしき頃 第2話
※※※※※※
「おはよう、明」
「ん~…」
朝日、ではなく、昼近くの暑い日差しが天井まで届く窓から部屋の中へ射し込む。日曜は、いつもこのくらいの時間になってしまう。ふあぁ、と大きなあくびをしながら、明は目を擦った。既に起きていた朔は明の横で、分厚い本を読んでいた。
もぞもぞと朔の体に顔を密着させて、本を覗き混む。
「なに、読んでるの?」
「グリム童話。金曜日に図書館で借りてきたんだ」
「ふぅん…ふぁ」
朔の体が温かい。その心地よさに、再び眠気を催したところで、キュルルルと明の腹が鳴った。
「…ぁ…ごはん…食べる…?」
一瞬にして、朔の体が強張るのが分かった。居たたまれない気持ちになって、明が「まだいい」と言うものの、体は正直でキュルルルと空腹を訴えてくる。
「お腹、空いてるんでしょ?明。…ほら」
本をサイドボードに置くと、きっちりと上まで閉じられたパジャマの前を開いて、朔は首筋を明に差し出した。朔の手は、小刻みに震えている。
怖いくせに。無理しなくていいのに。
そう思っていても、明の食欲は、本人の意思を無視して主張し続ける。
「…ごめん…朔」
「ン…」
シュンと眉を垂らして小さく謝りながら起き上がると、明は朔の首筋へ顔を埋めた。ビクッと朔があからさまに震えた。それを落ち着かせるように、朔の肩を抱き、優しく撫でながら、朔の首筋を舐める。
ふと、昨晩の父の言葉を思い出した。たっぷりと首筋を舐めてあげること、そして、朔の気持ちいいところを触ってあげること。
朔の気持ちいいところはよく分からなかったが、とりあえず昨日教えられた場所に手を伸ばす。舐めている首筋の反対側を指先で優しく撫でた。
「っ、…ふっ」
朔の驚く気配がした。しかし、気持ちいいのか分からない。そのまま、そっと下へ移動して、今度は脇腹を服の上から撫でた。
「ア、っえ…?…っあき、ら?」
戸惑う声が聞こえる。今までしたことがないのだから、困惑するのは当たり前だろう。
「…はふ(朔)…ひもちいい…?」
舐めながら問いかける。
「……え?…あの…ちょっと、くすぐったい…けど」
「ほっか(そっか)…ん」
くすぐったいのと気持ちいいのは繋がっていると、昨日言っていた。それなら、そのまま撫でてあげればいいのだろうと、今度は服の下へ手を差し入れて、直接肌に触れた。
「っ、え、何…?…明…?くすぐったい、って…っ」
朔が身じろぎをする。普段と違う行為に困惑しているが、いつもの強ばりはなくなっていた。確かに、こうしてあげれば、朔の痛みが少なくなるかもしれない。
父の言葉に、なるほどと頭の中で納得しつつ、もう一カ所、教えられた場所へ手を伸ばした。
「ッ!?」
朔が息を飲んだ。
「明…っ、ほんとに…どうしたの?…なんで、そっ、そんなとこ…っっ」
ツルツルとした下腹部の下にある突起を、手の中へ納める。自分のソレとほとんど同じ形のはずだが、朔のだと思うだけで、なんだか違うモノを触っているみたいだった。感触を確かめるように、小さな袋から先の方までやわやわと握る。
「き、汚い…よ、明っ…ねぇ、そこは…やだ…」
普段、明のすることに拒否をしない朔が、涙混じりの声で呟いた。慌てて明は顔を上げた。
「っ、朔、ごめん。イヤだった?」
「……うん。だって…なんで…そんなとこ、触るの…?」
目尻に浮かんだ涙を拭いながら、朔が小さく呟く。
「あ、あのね。父さんが言ってたんだけど、食べる時に朔のキモチイイとこ触ってあげると良いって」
「きもち…いい…?」
「うん。そうしたら、痛いのがあんまりなくなるって。それで、ココが一番キモチイイとこなんだって」
「…ココが…?」
「そう。だから、今日から、食べる時に触らせて?おれ、少しでも朔が痛くないようにしたいんだ」
「……」
朔は、握られたままの自分の性器を見つめて悩むように黙っていたが、暫くしてコクリと頷いた。まだ戸惑ってはいるようだったが、理解を示した朔にひとまず安心して、明は朔の性器を刺激し始めた。離した舌も、朔の首筋へ戻す。
「…、っ…っ」
「ふ…」
少しでも朔が痛がらないように、唾液をすり込むようにして何度も何度も舌で、首筋を舐める。唾液が鎖骨を通り、薄い胸へ流れていった。手の中の性器も、触れる箇所を変えると少しだけ朔が甘い声を上げることが分かった。先っぽと棒の裏側を刺激すると、「ンッ」と今まで聞いたことのない朔の声が上がった。
そろそろ良いかもしれないと思い、「噛むよ」と言うと、「…うん」と朔が頷いた。口を開き、普段は仕舞っている、牙を出現させる。手の動きも止めないようにして、明は朔の首筋に噛みついた。
「ッ、イあっ!!くぅっ、―――っっ」
苦しそうな朔の声が聞こえる。
なんだ、いつもとあまり変わらないじゃないかと思いつつ、明は朔の血を飲みながら、それでも手を止めなかった。すると、普段は痛みに耐えるだけの声に、少しだけ違う声も混じっていた。
ゴクリ、ゴクリと喉を鳴らして血を啜って、腹がある程度落ち着いたら、ずるっと牙を抜いた。皮膚の上を流れた血も丁寧に舐めあげる。その間に、ぽっかり空いた穴は、朔の回復力のおかげで閉じていった。
性器を弄っていた手を止めて、明は顔を上げる。
「っ――――」
息を飲んだ。
いつもは痛みに泣いている朔の顔が、今は違ったからだ。泣いてはいたが、眉を下げ小さな口をパカッと開けて、トロリとした蜂蜜のような瞳で明を見ていた。
「……痛く…なかった…?」
「…うん」
「きもち…よかった?」
「…よく分かんない…けど…」
「けど?」
「……いつもと違った…」
上気した頬のまま、朔は呟いた。
その言葉に僅かな安心感が胸に広がるのと、ドキッと鼓動が高鳴るのが分かった。
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