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第2章 榎本家攻略? 2
冷蔵庫の中にご飯の残りが置いてあったので、それと卵を拝借して卵粥をつくる。廊下に放置したままだったプリンも直した。
用意はできたが、榎本は先程寝たばかりだ。しばらく起きないだろうと思い、様子を見るために二階へ向かった。
ベッドに横たわる榎本は、ドアを開ける音にピクリと身動ぎした。起こしたかと思ったが、苦しげな吐息とともに寝返りを打ちスースーと音を立て始める。
時折思い出したようにその行動を繰り返していて辛そうだ。ベッドに凭れかかって、苦しそうな声が聞こえるたびに頭を撫でて宥めていた。
背凭れがギシギシと動く感覚で目が覚める。どうやらいつの間にか俺まで眠っていたらしい。
僅かに残る眠気を振り切ると、榎本がベッドから降りようとしていることに気がついた。
「あ…ごめん。起こしたか?」
「いや、別に。それよりどうした」
「喉が渇いて…」
そう答えた榎本に、先程作った卵粥を温め直し、ドリンクと薬もトレーに乗せて運んだ。
「少しで良いから食え」
「え…これ柳楽が作ったのか?」
「ああ。毒は入ってないから安心しろ」
「いや、そこは疑ってないけど」
いつもと違って間延びしたような喋り方は、幼い子供のようだ。身体を少し動かすのにももたついて一々手を出したくなるが、あまり世話を焼きすぎるのもよくないのか?
「…うまい。ありがとう」
ヘラっと笑う榎本を暫くそのまま見ていたが、3、4回口に運んだところで腕を止めた。
「もうやめとくか?」
「ん…腹は結構空いてるんだけど、身体重いから腕怠くて…。治ったらちゃんと全部食べるから、置いといて」
「動くのが怠いだけなら食べさせてやろうか?」
「えっ…な…そ、それはいいっ」
元より赤かった頰が更に赤くなり、顔がリンゴのようになった。ガキ扱いされてんのが恥ずかしいのか。
目を泳がせてアタフタしているのがおかしくて、ついつい揶揄ってしまう。
「ほら。口開けろ」
卵粥を少なめに掬って口元まで運ぶと、観念したように口を開いた。余程照れているのか固く目は閉じられている。
数回も繰り返していると慣れたようで、ちらっと薄目を開けてこちらを見てきた。
周りを怯えさせている見た目と、小動物のような行動は本当に意外というか、なんというか。耳を垂らした狼のようだ。
結局榎本は卵粥を完食した。薬を飲ませた後プリンもいるか聞いたが、どうやらもう満腹のようだ。
食器を下げるのは榎本が寝てからにしようと、テーブルに避けておく。
「ほんとにありがとな。こんな時に限って、家に誰もいないから、助かった」
「…ああ。大したことしてない」
「…そうだ。今度お礼に、弁当つくって持ってく」
「お前の親御さんが作るんだろ?」
「馬鹿、俺だって結構、料理できるんだぞ」
話しているうちに、薬が効き始めたのか榎本は眠そうにし始める。眠そうにしながらも少しドヤ顔で笑うのが不覚にも可愛いと思ってしまった。
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