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第2章 榎本家攻略? 3
「じゃあ楽しみにしてる。今はよく寝ろ」
「ん、おやすみ」
頭を撫でていると、またすぐに眠りに落ちた。少し口を開けて寝ているのがなんだか愛おしくて、吸い込まれるようにそこへ口付けた。
…我ながらキモいことしたな、と溜息をつく。今日は榎本に乱されすぎだ。まあ、お陰でこいつのことは友人としてではなくそういう対象として気に入っているのだと分かったのだが。
片付けようと食器の乗ったトレーを持ちドアを開ける…え、
「フーッ、フーッ…」
「え…っと、あの…?」
「王子様×不良キターーーーースパダリに膣キュン」
「は?」
「姉上様に連絡しなくてはっ!!あ、これは失礼、ぜひ我ら姉妹でおもてなしさせていただきますので少々お待ちくださいませっ!!」
「あ…いえ、お構いなく…。とりあえず、キッチン借りますね」
なんだこの異常にテンションが高い女は。榎本の妹か?それにしては気色が違いすぎる気がするが…。
姉上様ーっ!!!と携帯電話片手に叫んでいるそいつは、俺らより少し幼く見える。
というか我ら姉妹ってことは、姉もいんのか。女兄妹に挟まれてるなんてなんか意外だな。
食器を洗い終わって乾燥機に干していると、リビングのドアが派手に開けられる音が響いた。
「あの方です!あの方がスパダリ王国の王子でございます!」
「こら、ちょっと落ち着きなさい。そんなに煩いとトウヤの彼氏に気持ち悪がられてしまうでしょう」
トウヤの彼氏?何言ってんだと突っ込みたいところだが、姉らしき人物も興奮が抑えられてないのは丸わかりだ。目が血走っている。
こいつらマトモじゃないな、なんて失礼なことを考えながらもいつもの優等生ぶりを発揮して丁寧に挨拶をした。
「ご家族がいらっしゃらない間に上がってしまってすいません。僕はトウヤ君のクラスメイトの柳楽遊衣といいます」
「柳楽君ね、私はトウヤの姉の那嘉音です。よろしくね。この子は妹の紗里」
「榎本紗里と申します、兄上様!!」
俺はお前の兄貴じゃねぇよ、と言いたいのをグッと堪えてよろしくね、と微笑んだ。
「王子の微笑みッッガハッ…しかしこの笑顔は偽物で実は裏に隠されたドス黒い本性が…そうなるとお兄ちゃんが調教され…?!」
「コラ紗里、失礼なこと言わないの、それはそれで美味しいけど。ごめんなさいね、この子の言うこと無視してくれて大丈夫だから」
不味い、バレたか?…と思ったがどうやらそうではないらしい。未だに1人でブツブツ言い続ける妹は1度病院に連れて行ったほうがいいんじゃないだろうか。
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