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第2章 榎本家攻略? 5

「ただいま〜」 この2人の思考回路にドン引きしていると、気の抜けた声が響いてきた。なんだ、また誰か増えるのか。 これ以上面倒なのはごめんだ。そろそろお暇させてくれ。早く解放されたい。 だが、俺の願いが叶うことはなかった。 「ママんがかえってきた!!兄上様!是非お会いしてくだされ!!」 「いや、あの俺はそろそろ」 「そうね、母さんも絶対柳楽君のこと気にいると思うわ!!」 母さん〜ん、なんて声を揃えて玄関の方向へ向かっていく2人。姉妹ってこんなに仲が良いものなのか?もっと喧嘩ばかりしているものだと思っていた。 「え?トウヤの友達?!とうとう高校でも仲が良い子ができたのね…グスン」 おい、グスンって声発するものじゃないだろう。明らかにふざけていると分かるような口調でそう言った榎本の母親は、チラリと扉から顔を出した。 「ほ、本当にいる…!!」 俺は幽霊か。両手で扉を掴み、横向きに目から上だけを出しているその姿はなんとも奇妙だ。ここの家族はみんなおかしな奴らなのか。頭が痛くなったが、笑顔で挨拶した。 「榎本君と同じクラスの、柳楽遊衣です。お邪魔してます」 俺が微笑んだのを見て、榎本の母親はなにやら騒ぎ出した。 「キャーーー格好良い!プリンスよプリンス!お父さんが若い頃より格好…!…いやお父さんの方が…いやでも柳楽君もなかなか…だけど…いや…でも」 果たしてそこに決着を付ける必要があるのかは知らないが、放っておくと延々と続きそうなので口を挟んで止めた。 「榎本君のお父さんだったらきっと、すごくカッコいいんでしょうね。僕なんて足元にも及びませんよ」 「やっぱりそう思う〜?!そう!すっごい格好良いからうちのパパ!はぁ〜早く帰ってきて〜柳楽君とパパが隣に並んだところ見たい〜」 「美形の宝箱やぁ!壮観やろうのう」 ゲッと声をあげそうになる。この話の流れだと、本当に帰れなくなる気がしてきた。 というか妹の口調は何なんだ。統一しろ。 「榎本君の様子も見れたし、プリントも渡せたので僕はそろそろ失礼しますね」 「え〜!せっかくなら夕飯食べてって!ね?っていうか、トウヤどうかしたの?」 榎本の母親に姉妹が説明を始めた。どうやら榎本の母親はここ2日間実家、つまり榎本の祖父母の家に帰っていたらしく、榎本の体調が悪いことを知らなかったらしい。 「あら大変。おかゆ作ってあげないと」 「あ、勝手にすいません、先程台所をお借りして僕が作りました。完食していましたし、薬も飲んで今はぐっすり寝てるので大丈夫だと思いますよ」 「えぇ!ごめんなさいね、お世話になっちゃって!何かお礼しなくちゃ!ほら、やっぱり夕飯食べていって!大した料理じゃないけど…」 「いえ、大したことはしてないので。それに今日は多分、もう夕食が用意されていると思うので」 「さすがスパダリ…料理スキルは当たり前だということね…トウヤには勿体無いわ…」 印象が悪くならないように申し訳なさそうに微笑めば、榎本の母親も納得してくれた。 というか姉、母親の前でまで俺が榎本の彼氏だという発言をするのはやめてくれないか。 あらぬ誤解をされたら気まずいにも程があるだろうが。 また来てね、十何度も念押しされ、今度はパパにも会って行って欲しい、というよりはツーショットを見せて欲しいと懇願された。 唯一面識のない榎本の父親だが、彼だけはマトモなのだろうか。もし彼までおかしな奴だったら榎本は相当苦労しただろうな…というか、よくあんな常識的に育ったもんだ。 賑やかだったな。榎本本人があの場にいたらもっと騒がしいんだろう。 そんな光景を想像しながら歩いていれば、家にはすぐに着いてしまった。

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