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第2章 榎本家攻略? side 榎本トウヤ
喉が渇いて目が覚めた。もうすっかり外は暗くなっていて、当然柳楽の姿は何処にもない。
ベッドサイドに置かれた飲み物は汗をかいていた。緩くなっていたが、ゴクゴクとそれを飲み干す。
迷惑かけたな。明日謝って、礼を言おう。
正直、柳楽がうちに来たあたりの記憶は曖昧だった。薬も何もないからコンビニへ行って、帰ってきた途端眩暈がして…。
気付いたら柳楽がいて声をかけてくれた。
俺の具合が悪いからか、柳楽はいつもより優しい気がした。ベッドまで運んでくれたり、お粥まで作ってくれたりして。
…ベッド?待った、俺もしかして所謂お姫様抱っこされた?
きっと熱が下がっているのだろう。冷静に思考できる今、その光景を想像しただけで顔から火が出そうだ。
あの時は熱で頭がやられてたから、特に抵抗もしなかった…というか、普通に受け入れていた。
…ま、まあ、あれは忘れよう。体調が悪かったんだから不可攻略だ。柳楽も柳楽で背負うとか、引き摺る…のはちょっと嫌だけど、他の方法もあっただろうに。
そういえば、柳楽が料理出来るのは意外だった。あれだけ上手いなら毎日パンじゃなくて自分で弁当作りゃいいのに。…面倒なんかな。
お礼に今度俺が弁当を作ると約束したから、栄養満点なものを用意していこう。
柳楽から聞く彼の食生活は酷いもので、少し心配していたのだ。あの感じだと、夜飯もそんなに量は食ってないんだろうな。そういうの、家の人は心配しないだろうか。
…そういえば、屋上で話してる時あいつの家族の話聞いたことないな。何気ない話してると、多少なりとも話題になりそうなもんだけど。
複雑な事情でもあんのかな。今まで考えたこと無かったけど、あんまり触れない方が良さそうな気がして来た。
「トウヤ、起きてる?」
柳楽のことについて考えていると、トントンという控えめな音と共に母さんの声が聞こえた。そっか、もうじいちゃん家から帰って来てんのか。
体が重たかったが、かなりマシにはなっている。立ち上がってドアを開けた。
「おかえり」
「ただいま。体調どう?」
「かなり楽。多分すぐ治る」
「そう、なら良かった。柳楽君のおかげね!起きてるなら、何か食べる?薬もそろそろ飲んだ方が良さそうだし」
「ん、ちょっと腹減った」
「じゃあおうどんにしましょうかね〜」
もう食欲は戻ってるから、お粥やらうどんやら胃に優しいものばかりで、揚げ物が恋しかったが今は仕方ない。ニコニコしてる母さんと一緒に階段を降りる。
「てか、柳楽と会ったんだ?」
「うん、帰ってきたら那嘉音ちゃんと紗里ちゃんに捕まってた」
最悪だ。柳楽に謝らなければならない。あの2人に捕まるなんて、さぞかし面倒だったに違いない。柳楽を囲んでニヤニヤ気色悪い笑みを浮かべているあいつらの姿は容易く想像できた。
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