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第2章 榎本家攻略? 3
この外見に惚れて告白してきた男は数多いが、いざ付き合ってみると長続きしない。
名前の通り姉ちゃんは周囲からすると高嶺の花的存在で、それなのにイメージとは真逆の性格なことに着いていけない奴が多いんだとか。
珍しく今の彼氏とは半年以上続いているようで、最長記録を更新中らしい。なんだかんだ姉ちゃんのことは好きだから、このままうまくいって欲しい。
紗里はまだ中学生だから、彼氏の話なんてものは聞いたことがない。最近の子供はマセてるらしいから、もしかしたら言わないだけかもしれないけど。
「それにしても柳楽君って本当素敵な子よね〜!ね、今度また連れてきてよ!そうだ、お泊まりでもしてもらったら?!」
どうやら母さんは相当柳楽のことを気に入ったらしい。確かに芸能人レベルのイケメンだけど、恋する乙女のようなキラキラした目をするのは止めてくれ。
「泊まりって…そんな仲でもないし。まだ普通に遊びに出掛けたこともねーし」
「あら!じゃあ来週の土日にでも遊んできたらいいじゃないの!」
「行くつっても…あいつと俺で何処に行くんだよ」
「そういうことなら、主にこれを授けようぞ!」
紗里が自分の部屋まで走って行ったと思ったら、千円札くらいの紙を2枚手にして戻ってきた。
「これって…水族館のチケットじゃねーか。なんで男2人でこんなとこ行かなきゃいけねーんだよ」
「今時そんなのうじゃうじゃいるわよ。気にしてないで行ってこい」
「期限今年いっぱいまでだから、来週行けなくてもまだ大丈夫なのだ!」
お年玉で漫画を大量に買った時にもらった抽選券で当たったらしいが、そんなの自分で使えばいいのに。
不満な視線を向けてみたが、命令口調で姉ちゃんに言われてしまえばチケットを返すのは不可能そうだ。
深い溜息をついて、とりあえずそのチケットをポケットに突っ込んだ。
うどんを食べ終え薬も飲み、自室に戻る。先程の2枚のチケットを財布の中に直した。
とりあえず受け取っただけで、柳楽を誘うつもりは微塵もない。どうして男2人でこんなところに行かなくちゃならないんだ。
折角くれた紗里には悪いが、これは財布の中で眠っててもらおう。
もう一度溜息をついてから、ベッドに横になった。
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