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第3章 関係の変化 side 柳楽遊衣
「おはよう。体調はもう大丈夫?」
クラスメイトの前で俺が話しかけるとは思っていなかったのだろう、一瞬固まった榎本が素っ気ない返事をした。
俺も特に話しかけるつもりはなかったんだけど、気付いたら声が出ていた。
…まぁ、プリント持ってったのは周りにも知られてるし変には思われないだろう。
「良かった。病み上がりだから無理しないようにね」
「ありがと。…礼持ってきたから、昼」
やはり大勢の前で話しかけられたくないのだろう。
先程の反応からそう思い、会話を終わらせようとしたのだが、榎本はふ、と少し頰を緩ませて弁当を作ってきたと言った。
教室でもそんな可愛らしい表情を浮かべることに驚いた。
そういえば、自分もなかなか料理が上手いとか言ってドヤ顔してたな。
数日前を思い出して、つい笑ってしまう。
弁当のお礼を言って席に着いてからもニヤけが治らなくて大変だった。
…だったのに。
1時間目終了後、トイレか何か榎本が席を立った瞬間に騒ぎだす奴らにイライラが止まらない。
なんとなくこうなるのは分かってた。
だって朝榎本が小さく笑った時、それを見て周囲が一瞬ザワついたから。
「ね、マジでやばいよね?!あの笑顔!あんな優しい顔もできるんだ〜!」
「ツンデレっていうの?それともクーデレ?よく分かんないけどたまに見せる笑顔とか可愛いすぎるんですけど!」
「ていうか榎本くんが笑ったの初じゃない?激レア〜!!」
うるせーよ雌豚が、アイツは意外と表情豊かなんだよ。すぐ困った顔とか呆れた顔とかするからな。
風邪ひいて休んでた時なんかあんなんよりもっとデレ〜っとしてたし。
「怖いから近寄らないって感じだったけどさ、意外とそうでもないんじゃないっ?!私今度話しかけてみようかなぁ」
「えぇ〜!マジ ?!でも確かに、この学校で誰かに何かしたとか無いもんね〜」
「自分からは喧嘩吹っかけない、みたいな?!超硬派じゃん〜!」
なに言ってやがんだこのクソビッチ共が。榎本は俺のなんだよ、フザけんな。
ついつい口から本音が出そうになる自分を落ち着かせようと深く息を吐くと、榎本の話をしていた3人が振り返った。
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