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第3章 関係の変化 2
「あ!ねぇ、遊衣がいんじゃん!」
「ほんとだ!榎本くんとの仲取り持ってよ〜!プリント持ってって仲良くなったんでしょ?」
「お昼にお礼がどうのって言ってたし、みんなでご飯一緒に食べちゃおうよ〜!」
…こうなると嫌だから、今まで屋上以外で話さなかったのに。
ただでさえ短い榎本との昼休みなのに、お前らみたいな邪魔者が増えたらほとんど話せなくなるだろうが。
「う〜ん…榎本くん、大勢は苦手そうだから…。ごめんね?」
眉を下げて笑って見せるが、ギャル3人は全然聞くつもりはないらしい。
お前らみたいなヤリマンが相手される訳ねぇだろ、さっさと引き下がれカス。
心の中で盛大に貶していると、榎本が教室に戻ってきた。
断り続ける俺に頼んでも無駄だと分かったのだろう、ターゲットを変えた女達が榎本に声をかけた。
「ね、ねぇ、榎本くん!今日よかったら、お昼一緒にどうかな?」
「え」
「榎本くんと遊衣と私たち3人で!今柳楽くんも誘ってたとこなんだ〜!」
「えっ…と?」
榎本が困惑した顔で俺を見てくる。それが助けてくれという意味なのか、それともなぜ断らないのかと問い詰められているのか、よく分からない。
…どちらにせよ嬉しそうな感じは見受けられなかったので、もう一度断ることにした。
「ほら、榎本くん困ってるでしょ。やめとこう。大勢はそんなに得意じゃないよね?」
「…………別に」
「え」
「ほんと〜?!じゃあいいよねっ!楽しみ!教室でいいかな?」
「……ああ」
「決まり〜!早くお昼になんないかなぁ」
…は?何だこれ、意味分かんねぇんだけど。
あそこで大勢は苦手だって言っとけば良かったのに、何で別にとか言ってんだよ。
実は女に話しかけられて嬉しかったとか?
あの3人の中にタイプの女がいるとか?
…あー、イライラする。
目の前の机を蹴り飛ばしたい気分だったけど、どうにか気持ちを抑えて笑顔を振りまいた。
昼休み、さっきの3人が机と椅子を並べて場所を確保しているのを横目で見ながら、榎本に話しかける。
「良かったのかよ?」
「…別に」
またそれかよ。お前は某有名女優か。もしかしてそのツッコミ待ちなんじゃねぇの、と思うが榎本はあいも変わらず仏頂面だった。
そうだよ、お前はいっつもそういう顔してろ。教室で無駄に笑ったりすんじゃねーよ。
「用意できたよ〜!」
「食べよ食べよ!」
机を動かし終わったようで、女達がこちらに手招きしてくる。普段ならそれを手伝わないなんてありえないが、今日は榎本の本音を聞きたかった。
「…これ」
白い弁当箱を榎本が差し出してくる。あれだけ楽しみにしてた榎本の手作り弁当、2人で食いたかったのに。
「ありがとう」
こうやって素を出せないままお礼を言うのもなんか嫌だし、今日の昼休みもこの状態で榎本と話し続けないといけないのも嫌だ。
モヤモヤしたまま席に着いて弁当を開けた。
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