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第3章 関係の変化 3
「え、遊衣のお昼榎本くんが作ったの〜?!」
渡しているところを見ていたらしい3人が騒ぎ出した。
「…見舞いとプリントのお礼に」
「榎本くん意外とそういうの気にする人なんだ〜!何だっけ、義理堅い?みたいな?」
「えっ、ていうかヤバっ!めっちゃ美味しそうなんだけど!」
「これ榎本くんの手作りなの?!」
「まぁ、一応…」
キャ〜っ!と騒ぐ甲高い声にも、なんだかんだ受け答えしている榎本にも、ムカついてしょうがなかった。
それから何度も話しかけられたけど、笑顔で返せていたかどうか、あまり自分では分からなかった。
榎本の作ったもんが食べたいとか言って、女がおかずを取ろうとしてくるのを適当に躱したことだけは覚えてる。
様子を見ていた周囲も、榎本が意外と女と話してくれるだとか、乱暴じゃないだとか騒いで興奮しているようだった。
私も話してみたい、なんて声があちこちから聞こえてきて頭が痛くなる。
…俺だって今日マトモに話せてねぇんだよ、フザけやがって。
「榎本くん、ちょっといいかな」
「…?ああ」
チャイムが鳴って、自分の席に戻ろうとする榎本を教室から連れ出した。
「おい、どこまで行くんだよ。授業始まる」
歩いているうちに授業開始のチャイムまで鳴り始めた。それを無視して歩き続けていると、榎本が立ち止まってそう言った。
振り向くと、榎本が困った顔をしていた。朝、女に昼飯を誘われた時のように。
榎本が誘いを承諾した時のことを思い出して、また腹が立ってくる。榎本をジっとみつめながら、ゆっくりと近づいた。
「な、何」
「…」
「……何か、怖いんだけど」
榎本は何故か後退ったが、背中が壁にぶつかったために俺との距離が無くなっていく。
「…どういうつもり」
「な、何が?ていうか、顔近い」
フイ、と顔を逸らす榎本にまたムカついて、顔を掴んで俺の方を向かせた。
「なんで昼アイツらも一緒で良いとか言ったの」
「それは…」
焦った顔をして視線を泳がせるのは、なんで?
顔は無理矢理こちらを向かせたものの、視線を合わせるつもりはないらしい。
「俺の目ェ見ろよ」
「…」
その言葉にビクついた後、上目遣いで様子を窺うように見上げてきた。
何なの、その表情。
「言えない?理由」
「……言いたくない」
榎本は困ったような、少し怒ったような顔でそう言った。
「あんなクソ女達に話しかけられて嬉しかったとか?」
「…別にそんなんじゃない」
「榎本も男だもんな、ああいうビッチっぽいのが好きなんだ?」
「だから、そういうんじゃ」
「どの女がタイプなんだよ。お前だったらすぐヤれんだろ」
「…柳楽」
「あーでもごめん、もしかしたらあの3人のうち誰かと寝たことあるかも。あんま覚えてなくて悪いけど」
バチン
乾いた音が響く。
ギッと赤い目で睨み付けられ、なにも言わないまま榎本は去っていった。
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