25 / 41
第3章 関係の変化 5
「榎本くん嫌がってんじゃん〜」
「ていうか、遊衣と榎本くん相手にあんたらってやばくない?レベルの差が」
「身の程弁えなって〜」
2人を蔑むような発言に、一気に雰囲気が悪くなる。
「は?そんなこと言わなくてもいいじゃん」
「ちょっと酷くない?」
「いや〜だって釣り合わないでしょ。自分の顔も立場も考えた方がいいと思うな〜」
「榎本くんも遊衣も優しいからって気遣ってくれてんのに」
「ちょっと3人とも…」
バン!!
面倒な女子の争いが始まり仲裁に入ろうとした時、榎本が机をぶっ叩いた。派手な音が教室中に響き、クラスが静まる。
「うるせぇよ」
暴言を吐いた3人を鋭い目で睨み付け、地を這うような低い声でそう言った。
あまりのオーラに圧倒されて、誰も何も言えないようだ。その目と声を向けられた3人は、驚きと恐怖で固まっていた。
「お前らこそ自分の性格考え直した方がいいんじゃねぇの?」
「あ…」
震えて何も言わない3人に呆れたように溜息をついた榎本は、誘いをかけてきた2人に向き直った。
「俺は別に嫌がってたわけじゃねぇから。土曜昼からなら空いてる」
「…あ、えっと、ほんとう?!」
「あ、ありがとう!」
「また何か決まったら教えて」
「う、うん!わかった!」
「…じゃあ、今日俺帰るから」
シーンとした教室を榎本はスタスタと歩いて出て行った。
え〜…ここで出て行くのかよ…。俺が1番面倒な立場じゃねぇか。
榎本を盛大に罵ってやりたかったが、今はこの場をどうにかしなければならない。
「ごめんね〜、変な空気にしちゃって。お騒がせしました」
まずはクラス全体に苦笑いで謝った。周りも苦笑いしながら「女こえ〜」なんて言ってざわつきを取り戻した。
「真央と日菜もごめんね。嫌な思いさせて。大丈夫?」
「大丈夫!遊衣が悪いわけじゃないよぉ」
「これくらいどうってことないよ〜!」
「ありがと。2人とも可愛いから、やっかみ多くて大変だよね。ほら、3人も謝って」
「…すいませんでした〜」
「ごめ〜ん」
「ごめんねぇ」
全く反省していないのが丸わかりな謝罪だったが、3人はそのまま鞄を持って出て行ってしまった。
…ほんとしょうもないな。
2人はそいつらの態度を大して気にしていないらしく、ケロッとした顔で笑っている。
「ていうか、榎本くんに庇って貰って、遊衣に心配してもらって、むしろ有難いよねぇ?」
「うんうんっ、まじヤバかった〜!超格好良かった!好きになっちゃいそう〜!」
…また榎本のファンが増えたじゃねーか、どうしてくれんだ。
土曜までには榎本との関係を良くしておきたいのだが、明日から3日間家の用事で俺は学校に来ることができない。
そして今週の金曜は祝日なので、もう土曜までに榎本と会うことができないのだ。
あー、もう色々面倒臭ぇ…。
とりあえずそのことを真央と日菜に伝え、何をするかは任せるから決まったら連絡するように頼んだ。
ともだちにシェアしよう!