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第3章 関係の変化 4
"いや〜だって釣り合わないでしょ。自分の顔も立場も考えた方がいいと思うな〜"
あの言葉は俺ではなく、土曜の誘いをかけてきた2人に向けられたものだったことは分かってる。
だけどそれは、見当違いな意見だ。
彼女達は普通に可愛いと思うし、身なりにも気を使っていて、釣り合わないところなんてない。
寧ろそんなことを言う奴の方がどうかしてる。
昼休みの3人に言ったことは少しキツかったかもしれないが、間違っているとは思わない。
本当に釣り合っていないのは、俺の方だ。
彼女達の言葉を聞いて、自分の思いを自覚した。
俺は柳楽が好きだ。
だから昼休みも、あんなことでイライラしてしまったんだ。
これまでのモヤモヤした気持ちにも全て納得がいく。
目付きが悪いとか傷が多いとか、そんなことを気にする前に俺は男なわけで…。
"身の程を弁えろ"
この言葉が、俺の胸に深く突き刺さっていた。
いつもより早い時間、家に着くと何故か姉ちゃんがいた。今日はもう少し遅いって言ってなかったっけ。
「あら、早かったのね。おかえり」
「ただいま。姉ちゃんこそ早くね?」
「休講になって暇になったの。…それより、何か元気なくない?」
「…いや、別に」
我が姉ながら、勘の鋭さは天下一品だ。否定しても全く信じていないようで、ジリジリとにじり寄ってくる。
「昔から機嫌が悪いと"別に?"ばっかり言う癖気付いてる?エリカ様かってツッコミたくなるわよ」
クスクスと笑う顔は気品に溢れて美しい。
美人という言葉は彼女の為にあるのかと思わせる程綺麗な姉に、ウッカリ言葉を漏らしていた。
「…いいな」
「…ん?」
俺も姉ちゃんみたいな女だったら、柳楽の隣に並んでもおかしくないんかな。
深く溜息を吐いた俺に、姉ちゃんはハテナを浮かべている。
「何がいいって?」
「…別に」
「…だから、エリカ様かっての!」
「エリカ様?」
「いやさっきの話聞いてないんか〜い」
白目を剥いた変顔でツッコミを入れる姉に、こんな風になりたいと思うのは血迷ったな、と思った。
「ま、着替えたら降りてきて」
「いいけど…何?」
「ちょっと晩酌に付き合いなさい」
「いや、まだそんな時間じゃねぇ〜…」
ほんと、中身はオッサンだよな。
悪態をつきながらも部屋着に着替えた後リビングに向かう自分は、もしかしたらシスコンなのかもしれない。
…いやいやいや、ないから。
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