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第4章 酒に飲まれろ side 榎本トウヤ
「たで〜までござる!…ってナニコレ?」
「お〜おか〜」「おかえりぃ〜」
日本酒飲み比べセットももう少しで無くなりそうな時、紗里が帰ってきた。
「お兄ちゃんに飲ませたのですか姉上ぇ!ベロンベロンやないか〜い!」
「ははっ相変わらずテンション高いなぁ、紗里。ヒック」
「ちょっと人格変わっちゃってるけどぉ?!酔ったらこんなキャラになんの?!まだ今7時半だよね?!何時から飲んでたらこんなことになるんですかねぇ!」
「あ〜3時くらいだっけ?分かんね〜」
「空き缶がゴミのようだ…ってゴミやないか〜い!」
「いいからあんたも座りなさいよぉ〜ヒック」
「ほら、座れ座れ」
椅子を引いてやってバンバン叩いていると、自分のジュースを取り出して俺の隣に来た。
「今ねぇ〜、トウヤの恋愛話してんの〜ヒック」
「?!つ、つつつつまり、お兄ちゃんと兄上様のお話?!ちょっと、なんで紗里もすぐ呼んでくれないでござるかっ!」
「ハイハイごめん〜。で、話戻すけどぉ、あんまり卑屈になってたら失礼だからねぇ?」
「しつれ〜?なんでだよ、誰にだよ〜…」
「だって〜トウヤの言い方だと男が男に恋しちゃいけないって感じじゃん?同性を好きな人なんかいっぱいいんのにさぁ、その人たちの気持ちぜ〜んぶ否定しちゃってるしぃ〜」
「…話を聞いていないのになんとなく流れが分かってしまう自分が怖いっっ!これが私の腐女子経験値ィ!」
その人たちの気持ちを全部否定…。
その通りだと思った。同性を好きになったらいけないなんて、そんなバカげた話はない。
…だけど、そんなつもりじゃなかったけど、普通じゃないのは俺の方だって分かってるから、不安になるのも仕方ないだろ〜……。
「だって…普通は男女じゃん!だから気持ち悪いとか思われたらどうしようって考えちゃうんだよ〜…ヒック」
「普通なんてないのでありますよ!そんなもん糞食らえじゃ!!ただ多数派か少数派か、それだけのことじゃきぃ!」
「よく言った紗里ぃ!いい?そんなもんね、きのこの里とたけのこの山どっちが好きか分かれてるのと同じようなことなのよぉ!」
「姉上様酔いすぎです、逆です!きのこの山とたけのこの里です!!」
「細けぇなぁ〜!大体柳楽はそれを気持ち悪いと思うような男なのか!そんなに心が狭い男なのかぁ?!そんなにキンタマ小っせえ男なのかよぉ!」
「…ヒック…違う…多分柳楽はそんなこと思わない…ヒック…柳楽のちんこは多分デカイ…」
そうだよな…。柳楽はそんな風に、人の気持ちを否定するような奴じゃない。
確かに本性は結構キツいけど…真剣な奴のことを馬鹿にしたりするような奴じゃないと思う。
あと多分ちんこもデカイと思う…。
「ちょっ、お兄ちゃん大丈夫?ほら、ティッシュ!超激レアな泣き顔ゲットォーーー!」
カシャシャシャ、スマホの連射音が鳴る。
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