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第4章 酒に飲まれろ 5

「俺が悪かったから」 泣き止め、とでも言うように抱き締められる力が強まる。 あれだけ怒っておきながら、柳楽がこんな風に謝る程のことをしたっけ…?とよく分からなくなってきた。 だけど、もう仲違いしたままだと思っていた柳楽の体温がここにある。 大好きな柳楽に抱き締められている。 そう認識したら余計に泣けてきて、ぐずぐずと涙が止まらなくなってしまった。 柳楽はそれに気づいたのだろう、顔を肩にうずめるのをやめて、頭を撫でてくれた。 その優しい手つきに、また言葉がこぼれ落ちる。 「なんで謝るんだよ…別に柳楽大して悪いことしてないだろ…」 「あんなに怒った癖になんだよそれ」 ケラケラとおかしそうに笑った柳楽は何を考えているのだろう。 とりあえず謝っておけば機嫌が直ると思ってあんなこと言ったのだろうか。 だとしたらそれは逆効果だ、と顔を上げてジロリと柳楽に目をやると、そこにはいつもの意地が悪そうな笑顔があった。 「榎本が妬いてんのに気付けなくてごめん」 「…なっ?!や、妬いてなんか…!」 「俺が女といたいと思ってるとか勘違いして怒ってたんだろ?それってやきもちじゃん」 「ナルシストか!なんで俺が柳楽にやきもちなんかっ…」 「違うの?俺は妬いたけど」 「…え、」 「榎本のこと独占したかった」 「な、何言ってんだよ」 「なのにお前がアイツらも一緒でいいとか言うから腹立った」 「腹立ったって…」 それって、俺が思ってたことと一緒だ。 恥ずかしくて否定したけど、柳楽も俺と同じように思ってくれてた…? 「…なんで?なんで、俺に嫉妬すんの…?」 酔っててよかった。じゃないとこんな大胆なこと聞けない。 恥ずかしいけど、だけど聞かずにはいられなかった。 そんなことはあり得ないと思ってはいても、こんなことを言われて期待しない奴なんていない。 もしかしたら、柳楽も俺のこと…。 「それ、わかってて聞いてんだろ」 揶揄うように笑った柳楽は、骨ばった綺麗な手で俺の頰をスルリと撫でる。 「そんなに期待した目で見つめて、何て言って欲しいの?」 クスクスと笑う柳楽の瞳に吸い込まれるように、唇を寄せた。 自分からキスするなんて普段なら絶対にあり得ない。 酒って怖い…とどこか頭の片隅では冷静に考えていたけど、そんなこと考えられなくなるくらいすぐに夢中になった。 少し驚いたようだった柳楽は流石に手馴れているようで、すぐに主導権を持っていかれた。 軽く触れただけのつもりだったのに、だんだんと深くなっていくそのキスに息が苦しくなる。 頰を撫でた柳楽の手はいつの間にか首と顎を支えていて、力が込められてグッと強く引き寄せられていく。 いつまでも突っ立って話していた俺たちのすぐそばにはベッドがあって、柳楽がそこに俺を押し倒した。 「…ん…ぅ…ふっ、ぁ…」 下に姉ちゃん達もいんのに…。分かっているけど、今の俺たちにはそんなこと関係なかった。 押し倒されてもなお続く甘い口づけに、身体が脱力していく。酒の影響もあるんだろう、柳楽の首に回した腕も重たくなってきた。 自分から漏れる甘い声が頭に響いて、余計に酔いが回っている気がする。 もうダメかも…。 深くて優しくて、気持ち良いキスに意識が朦朧とした。

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