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第1章 噂の2人 side 柳楽遊衣

「「「おはよ〜っ!」」」 朝から甲高い声で挨拶をしてくる女達。 お前らそれ本当に普段話してる時と同じ声か? どんな声で喋ろうと勝手だけど、頭痛ぇっつうの。 ただでさえ朝起きるのは苦手でイライラすんのに、毎朝登校中に纏わり付かれるこの時間は更にイライラする。 頼むから挨拶したらさっさと行ってくれ。 なんでそこで隣をキープしたり腕を絡ませたりしてくるんだよ、気色悪い。 態とらしい上目遣いなんて見せられた日には、目潰ししてやりたくなる。 俺はお前と付き合ってるわけじゃねぇし、キモいから触んな。 そう言えたらどんなに楽か。 色々あって優等生を演じているわけだけど、本当にウンザリしている。 もう全部やめて、本音を晒け出してしまおうか、なんてたまに馬鹿なことを考えるくらいには。 実際にはそんなことするわけないんだけど。 昼休みにも、飯くらい静かに1人で食いたいのにまた女子が群がってくる。 だかいつも人見知りの友人と過ごすことにして逃げている。そんな友人存在していないけど。 お前らみたいな香水臭い女と飯なんか食いたくねぇっつうの。 嘘をついて誘いを断っている以上、1人で飯食ってるところを見られるわけにはいかない。 だからいつも昼休みは屋上にいたんだけど、ある日鍵が無くなった。 養護教諭のミドリが産休に入る少し前、鍵を渡したんだ。その鍵はもともとミドリが持っていたもので、サボるために貰ったものだった。 ミドリに子供が出来る前、というよりはそういう相手がいると知る前まで、俺達は気が向いたらあってヤっていた。 所謂セフレだ。保健室じゃたまに生徒が来る。で、何故か今は使われてない旧校舎の音楽準備室にはデカいソファーがあったから、そこで。 最後にヤった時、学校が屋上の鍵のスペアを増やすとかで、一度今ある屋上の鍵を集めることになったらしく、一旦返せと言われたのだ。 それが終わった後また返すと言われたのに、 「ごめん無くしちゃった〜」 とか抜かしやがった。増やしたスペアのうちの一つを貰えたからまあいいんだけど、それが出来上がるまでは屋上が使えなくて女子の目を避けるのはかなり面倒だった。 久しぶりに訪れた屋上は開放的で、ついつい溜息が漏れる。 「どいつもこいつもうるせぇんだよ、雌豚が」 凝った身体をほぐしていると、後ろから男の声が聞こえた。 「……っマジで?」 まさか屋上に人がいるとは。今の独り言は完全に聞かれたよな。 面倒なことになった、と思いながらゆっくり後ろを振り返る?

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