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第4話 ルーティン
誕生日とはいえ、仕事は通常通りだ。けたたましく鳴り響く目覚ましに起こされた紫乃は、大きく伸びをしてシャワールームに向かった。鏡には、寝ぼけ眼でだらしない寝癖のついた自分が映っている。こんな姿、誰にも見せられないなと苦笑しながら、部屋着のTシャツとスウェットを脱ぎ捨てた。
朝一番のシャワーは気持ちがいい。栗色の髪がしっとりと濡れ、しなやかな筋肉のついた身体に雫が滴り落ちていく。
紫乃は痩せ型ではあるが、貧相な身体つきというわけではない。着痩せするタイプなので周りからは「細すぎる」と思われることもあるが、体力維持のためにもしっかりと身体を作っているのだ。
熱いシャワーを浴びて少しずつ覚醒していく意識の中、紫乃は今日のスケジュールをざっとおさらいした。
まずは朝一で雑誌の対談だ。相手は同期の俳優で、気心の知れた仲だからやりやすいだろう。それが終わったら速攻で劇場へ移動し、舞台の昼公演。それが終われば少し時間をあけて夜公演がある。
一日中動きっぱなしで正直大変だが、仕事があるというのは幸せなことだ。
シャワーを終えた紫乃は、コーヒーを淹れている間にいつものスキンケアをして、最後に髪を整える。これが紫乃のルーティンだ。あとは部屋の片隅にある観葉植物に水をやったり、テレビをつけてコーヒーを片手にぼんやりとニュースを眺めたりする。
そうしている間に、いつの間にか時間は過ぎてしまうもので。
「……あ、時間」
少しゆっくりしすぎた。そう思いながらクローゼットを開く。
あれでもない、これでもない、と悩みながら、その日の気分でコーディネートする。今日は、細身の白いパンツに、オーバーサイズの黒いパーカー。どちらも気に入っているブランドの新作だ。
身支度が整ったら、愛用している大きめの黒いショルダーバッグをチェックする。ボロボロになった台本に、手帳、タオルに着替えなど、諸々必要なものを入れているため、いつでもバッグはパンパンだ。
「やっば! もう出なきゃ」
ついつい独り言が飛び出した。電車の時間が迫ってくる。
充電していたスマートフォンを掴み、急いで玄関を開けると、眩しすぎる太陽の光に包まれた。
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