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第14話

゛421号、時間だ。゛ 身長の高い白衣を着た男が僕を呼ぶ しずい『え、でも...朝と昼だけじゃないんですか?』 ゛今日から夜も追加された ゛ 緑心『...。しずい?』 手足が震える中、男に手を引かれ実験室とは違う部屋へ連れられる しずい『どこ、行くんですか?』 ゛421号、お前も今日から大人の仲間だ ゛ そう言われ、暗い部屋へ放り込まれる 薄らと明かりが灯れば、2人の男が僕を囲む すると、突然服を脱がされる しずい『な、何をするんですか?』 震える体を抑えるように座り込む ゛大丈夫だ、怖いことは無い ゛ そういう男達の目はまるで正気ではないようにみえた。 しずい『こわい、いやだっ!たすけてっ...!』 物語ならば普通、こういうタイミングでヒーローが助けに来る。 だがココは施設という檻の中。 助けというものは来ない。 その日僕は体内に薬を入れられ男達に体を貪られ、弄られ、舐められ、初めての感覚が体を支配した あの日あの子が言っていた『気持ちいい』という感情がこれなのか もし、本当にこれがその感情ならば僕は知りたくなかった 次の日の朝、緑心は叫んでいた 緑心『お願い!出して!パパやママの所にかえして!』 自分の置かれている立場に気づいた途端これだ しずい『そんなの、意味無いよ。僕もお前も。もう、誰も助けてなんてくれない。』 僕のその言葉に緑心は諦めたのか昨日まで輝かしかった彼の瞳に一切の希望の光が灯らなくなった 涙を流す緑心 その時、男たちが緑心を迎えに来る ゛今日はお前だ ゛ 緑心『...やだ。やだやだやだ』 緑心は恐怖で震え泣き叫ぶ しずい『諦めろよ』 僕は心無い言葉を言う。 だってココにはヒーローも何もいないんだから。 緑心『ねぇ、しずい。きっと助けは来るんだよ?信じていればきっと助けてくれる人がいる!だから...!』 男達に手を引かれながら必死に訴える緑心を 僕は睨む しずい『失せろ。りしん。』 重く硬い扉は静かに閉まる しずい『...ごめん。』 緑心の居なくなった部屋で謝る僕 すると、どこからともなく爆発の音が聞こえ重たい扉を吹き飛ばす -ドォォォン!!ー しずい『!?』 煙の先に立っていたのは一人の女性と銃を持った数人の黒ずくめの男達 女『この糞共ぉぉぉ!!うちの子を返しやがれぇ!』 その女の目は今にも人ひとり殺しそうな目をしていた 施設の男は怖気づいていた 男『ひぃぃぃ!く、黒山組ぃ!』 緑心『ママ!』 連れていかれそうになっていた緑心はその女を゛ママ ゛と呼ぶ 震えている男の手を振り払い、その女に駆け寄る緑心はこちらに気づく 緑心『みんな!逃げよ!もう、大丈夫だから!』 その笑顔にはもう、輝きが戻っていた 座り込む僕を追い抜くように子供たちは外へ逃げる そんな中、緑心はこちらへ向かってくる 緑心『ねぇ、しずい。言ったでしょ?信じていれば助けが来るって!』 僕の手を取り笑いかける緑心 その手には優しさと温かさがあった 自然と涙が出てくることに気づいたのはそれから数秒後だった 緑心『ね、しずい。帰ろうか。』 しずい『うぁぁぁぁぁ!ありが...とう...!』 その日僕は初めて大声で泣いただってもう、どれだけ泣いても怒られないから、緑心に頭を撫でられながら沢山泣いた だが、この感情の意味は分からなかった その後どうしたのかはよく覚えていないけれど きっと、緑心さんはこのことを覚えてはいないだろう。 でも、それでいい。 それがいいんだと俺は思う。 ~14話end〜

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