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第15話
兎黒「...!」
兎黒は不自由な水の中で沈んでいく紫都李に手を伸ばす
やっと掴んだ服を手繰り寄せ紫都李を抱え水面へ向かって泳ぐ
兎黒「ぷは!ゲホッゲホッ!がんばれよっ...紫都李くん!」
荒波の中、岸に向かって泳ぐ兎黒。
黄泉「君、大丈夫?」
岸に上がると一人の男が声をかける
兎黒「...あんたは?」
黄泉「僕は黄泉。緑心に頼まれて様子を見に来たんだ。」
兎黒「そうかい。俺は兎黒。こっちは紫都李...。兎に角今はこいつを助けたい。」
兎黒は黄泉の目をまっすぐ見る
黄泉は頷く
黄泉「分かった。」
兎黒は紫都李の息を確認しながら話しかける
兎黒「そういえば、緑心くんは?」
黄泉「彼、さっきまで息がつらそうだったから今は少し休んでるよ。」
兎黒「それ、大丈夫なのかよ...。」
黄泉「彼ならきっと、大丈夫だよ。ところで、その子は大丈夫?」
兎黒「いいや...こりゃぁ...かなり水飲んでる。」
兎黒は心臓マッサージを続ける
黄泉は首を傾げる
黄泉「ねぇ、多分その子。心臓マッサージだけじゃ息は戻らないよ。」
兎黒は黄泉を横目で見やる
兎黒「...どうすりゃぁいい?」
黄泉「人工呼吸...。」
兎黒「分かった。」
兎黒は言われた通りに息をいっぱい吸い唇を重ね紫都李の口から一気に息を入れる
紫都李「ゲホッゲホッ...!」
紫都李の口から溜まっていた水が出てくる
兎黒「紫都李くん、大丈夫か?」
紫都李「兎黒さん...。」
紫都李は2人の顔を見る
紫都李「緑心...さん...は?」
心配そうに周りを見渡す
黄泉「向こうで寝てるよ。」
紫都李「あんたは?」
兎黒に支えられながらゆっくりと体勢を起こす
黄泉「僕は黄泉。さっき緑心と知り合った」
紫都李「...緑心さんに何かあったんですか?」
黄泉は頷く
黄泉「さっき2人の声がしたからこっちへ走ったんだけど、途中息が辛そうだったから。寝かせておいた。」
紫都李「なら、早く行ってあげないと!」
紫都李は覚束無い足で緑心の方へ向かおうとする
兎黒「ちょ、紫都李くん。まだ歩けないじゃんかぁ。」
紫都李「でも!緑心さんが!」
兎黒は頬をかきながら少し考えると紫都李を担ぎだす
紫都李「え、ちょっと!」
兎黒「これなら、速いっしょ?」
兎黒は仕方なさそうに溜息をつく
紫都李は少し考える
紫都李「まぁ...確かに...」
兎黒「さーてと。緑心クンも心配だし、行くよ。黄泉クンも。」
そして3人は緑心のいる所へ走り出した。
〜15話end〜
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