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第26話

少年「お父様、お父様!」 9才の少年は裕福な家庭に生まれ日々勉学に励んでいた 父親「静かにしなさい。青灑。」 青灑「お父様!僕、テストで100点を取りました!先生にも褒められて...」 父親「喧しい!レイラ!こいつを外に出せ!」 侍女「申し訳ございません旦那様。青灑様、こちらへ」 レイラと呼ばれる侍女は強く青灑の手を引いた 青灑「あ...。」 諦めたように青灑は俯き父親の部屋を去る。 青灑の家は父子家庭で母親の代わりに侍女を雇っていた 侍女「青灑様。旦那様は忙しいので部屋には入らないようにとの事です。それでは。」 青灑は大きな子供部屋へ入れられ部屋の隅で蹲る その日彼は家の居心地の悪さに不満を抱いた それから月日が経ち14歳になった青灑は変わらず勤勉に励み続けた 常に成績はトップで運動もできるまさに絵に描いたような青年だった 青灑「ただいま、帰りました。」 侍女「お帰りなさいませ青灑様。」 青灑「...ただいま。」 侍女は気づけばレイラから変わっていた 青灑「...父様は?」 侍女「お部屋にいらっしゃいます。」 青灑「分かった...。」 青灑「(そういえばずっと父様に会っていない...)」 青灑は1ヵ月ほど会っていない父親の部屋へ入る ゛コンコン ゛ 青灑「失礼します。」 青灑「...!?なんだっ...この臭い。」 何かが腐ったような臭いに顔を上げると 夕日により逆光で影になる人影がいた 青灑「父様...?...父様!!うっ...」 そこには腹を裂かれ腸を外へ出されている父親の姿があった。その様を見た青灑は吐き気が止まらなかった 侍女「あぁ、青灑様...見つかってしまいましたね。」 ふと振り向くとカラリカラリと音を立てて大きな模造刀を引きずり歩く侍女の姿があった。 青灑「...お前っ。何のつもりだ!」 青灑は怒鳴りつけると侍女は少し沈んだ顔で目を逸らす 侍女「あぁ、青灑様。そう怒鳴らないでください。わたくしはただ、青灑様にしっかり栄養を取っていただきたいだけなのです。」 青灑は侍女の言っていることを一つも理解出来なかった 青灑「何が言いたい。訳が分からない!お前は...!」 侍女「青灑様、貴方はそこまで察しの悪いお方ではございませんでした。ですが旦那様を失った今、貴方は怒り狂い自我を失っている...。あぁ、お可哀想な青灑様...」 侍女は青灑の言葉を聞かず言葉を重ねる 侍女「...宜しいでしょう。私がヒントをお出しいたいますね!」 そう言うと侍女はニコッと笑う 侍女「そうですね〜...例えば昨日の夕食、リブロースのキャビア添えですね。」 そう言われ青灑は吐き気が込み上げてくる 侍女「えぇ、そうですよ。貴方が思っている事でセイカイです!貴方は旦那様...父上様をお食べになった...!さぞ旦那様も貴方に食べられて嬉しいことでしょう!」 そう言うと侍女は目を細め笑う 侍女「そして...ワタクシの本当の目的は、貴方様でございます。青灑様。」 青灑「...は?」 侍女「旦那様を食べられた貴方は今素晴らしい存在となっている!そんなあなたをワタクシが食せばワタクシは貴方様に近づける!あぁ、お美しい青灑様、ワタクシに食べられてくださいませ。」 青灑「...狂ってやがる。」 そう言うと侍女は刀を青灑に向って振り下ろすが軽々と青灑は避け侍女の背中を蹴飛ばす その拍子に刀の刃先が上を向き侍女の喉元を貫いた 侍女「ぅがぁぁぁあぁっ!!ゴフッ!」 喉を貫いても侍女は生きていた。 青灑はもがき苦しむ侍女を蔑む目で見下す 侍女「ぐぁどぅぉ...!じゃぜぁざぁあぁ!!」 侍女は何かを喋っているがその言葉はもはや理解ができない状態だ 暫くして侍女は息を引き取った 青灑「...可哀想。ね。ホント、愛されてないってのは死ぬより辛いんだ。生きてる気がしないんだから。...ざまぁみろ...」 青灑はそう言いながら自分の手元に飛び散った血を見て泣いた 〜26話end〜

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