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第28話
玄関の扉が開く音がする
緑心「ただいまー。」
危機を感じた紫都李は緑心に声を掛けようとする
紫都李「りし...!ひぃっ...」
青灑は今にも刺さりそうなぐらいに紫都李の背中に押し付ける
青灑「喋ったら刺さっちゃうよ?あぁ、あと、君達も動いたり喋ったら紫都李くん、どうなるか分かってるよね?」
そう言い皆を黙らせると緑心が入ってくるであろう玄関とリビングに繋がる扉の近くへ紫都李と一緒に移動する
緑心が扉を開きリビングを見渡す
緑心「あ、皆揃ってるんだ。」
青灑「緑心くん、おかえり。」
緑心「あ、青灑さん。帰りました。...ところで皆、どうして喋らないの?」
青灑は緑心からは見えない位置で紫都李にナイフを押し付けている
そして青灑と紫都李は緑心に近づく
緑心「2人とも、仲良くなったんですか?」
青灑「そうなんだーさっきね、黄泉くんに昨日の話を聞いてね。俺が原因だなーって思って話し合ってー...」
緑心「...へぇ。」
青灑は緑心に手を伸ばすと緑心の腕を引く
緑心「うわっ...!?」
すると緑心の首元にポケットに閉まっていたもう一つのナイフを突きつける
緑心「し、青灑...さん?」
突然のことで驚いた緑心は震えていた
青灑「さぁて、みんな揃ったね?」
緑心「どういうこと?一体何が...!」
混乱している緑心は声を上げる
青灑「緑心くんのお人好しな性格のおかげで俺はここに来れた。でも、本性が知れちゃったからね。他にバラされると厄介なんだ。だから皆にはココで死んでもらうね?」
その言葉に緑心は口を開いた
緑心「やっぱり、前の青灑さんはホントのあなたじゃ無かったんですね?」
青灑「へぇ、気づいてたと?」
緑心「えぇ、昨日僕と二人になった時から...ですね。貴方はきっと二重人格で今の青灑さんは普段の青灑さんとは異なる存在だ。」
青灑「ふぅん。面白い。そこまで分かっていて何故ここに入れたんだい?」
緑心「...その前にナイフを下ろしていただけませんか?」
だが青灑はナイフを下ろさない
青灑「まぁ理由はどうでもいいや。どうせ君達死ぬんだからね。」
青灑は笑顔でそう言う
緑心「...あぁ。もう。仕方ないです。ホントは痛いし危険だからやりたくないんですよ。でも...規則を破り手を出したのは貴方ですからね?」
青灑「...?」
緑心は上目遣いで青灑を睨みつけると
青灑の持っているナイフの刃を両手で握りこみそのまま青灑の手に全体重をかける
青灑「!!」
青灑はバランスを崩し緑心側に傾く
緑心「紫都李くん!!伏せて!」
紫都李はその指示に咄嗟にしゃがみ込む
すると緑心は青灑の溝落ちに回し蹴りを直撃させる
青灑「かはっ!」
青灑は一瞬息ができなくなり倒れ込む
あまりの一瞬の出来事に黄泉と兎黒は呆気に取られる
緑心は掌から血を流しながら青灑の手首を拘束すると皆の安否を確認する
緑心「ふぅ...皆、怪我とかは無い?」
黄泉「...緑心すごい...手、大丈夫?」
緑心「あー。昔、護身術ぐらいは教えてもらってましたので...」
緑心は手を隠すと黄泉に笑いかける
そして青灑の目の前でしゃがみ込み話し出す
緑心「青灑さん...言ったでしょう。ここでは暴力や殺しはあってはいけないんですよ。」
青灑「...どうして。」
緑心「ん?」
青灑「どうして誰かのために自分が危険を冒してまで...。何を守る必要がある。」
青灑は緑心を妬むように睨みつける
緑心「んー。強いて言うなら...ココが、皆が好きだからですかね。それ以外に守る理由がありませんね!あぁ、あと僕がここの管理人だから...ってのもあるのかもしれません。」
少し照れながら緑心は言う
しばらく沈黙が続き青灑と緑心は睨み合う
青灑「...はぁぁぁ。もう。完敗だよ。...兎黒くん。」
大きなため息をつくと青灑は兎黒の方を見る
すると皆は兎黒の方に目をやる
兎黒「...っ。ぷはっ!」
突然兎黒が吹き出す
兎黒「ひぃ...あははっ!」
笑いが止まらない兎黒を他所に黄泉と緑心と紫都李は目を丸くする
青灑「ごめんね。皆。」
兎黒「実はドッキリでしたー!」
紫都李「は、はぁぁ!?」
黄泉「?」
緑心「え?え?どういうこと?」
兎黒は一旦深呼吸すると口を開く
兎黒「んとね、実は昨日君らが喧嘩してるのきいててね。」
青灑「それで2人で仲直りさせようと考えたんだ
。」
兎黒「ま、主に俺が考えたんだけどねー!」
得意げに兎黒がそう言うと紫都李は腰が抜けたように足から崩れる
紫都李「はぁぁ!?なんだそれ...」
緑心「え、でも...青灑さんの二重人格ってのは...。」
青灑「あ、それはホントだよ。まぁ正確には多重人格だけどね。それを説明したら兎黒くんが活用しようって。」
紫都李「で?結局?アンタは反省してんの?」
青灑「あ、うん。緑心くん。ホントに昨日はごめん。」
緑心「いいえ。気にしてないですよ!あ、そうだ!今日は青灑さんの歓迎会をしようと思います!」
黄泉「...緑心がいうなら」
兎黒「いぇーい!パーティー!よし!青灑サン飲み比べしよう!」
青灑「いいよー。」
騒ぐ人達に紛れて紫都李が緑心に近づく
紫都李「あの...緑心さん。」
緑心「ん?」
紫都李「昨日はその...ごめんなさい!」
紫都李は深々と頭を下げる
緑心は紫都李の頭を撫でる
緑心「僕も悪い部分があったからさ。紫都李くんが全て悪いわけじゃないよ。」
そう笑いかけるとそれを見ていた黄泉も安心したように笑った
話が終わったのを見計らって青灑が緑心に話しかける
青灑「緑心くん。さっきもごめん。血出てるしかなり傷深いから手当しようか。」
青灑は申し訳なさそうに救急箱を持って緑心の手に包帯を巻く
緑心「あ、すみません...ドッキリだったとはいえ、僕もさっき溝落ち思いっきり蹴ってしまって。」
青灑「いやぁ、かなり効いた。見かけによらず強いよね。」
青灑は蹴られた部分をさすりながら言う
緑心「青灑さんはこれからもココにいてくれますよね?」
青灑「うん。皆が良ければ置いてほしいな。」
青灑はみんなの方を見る
兎黒「俺はいて欲しいー!酒飲み仲間が増えるのは嬉しいからね〜!」
黄泉「...緑心がいいなら」
紫都李「...俺らに危害を加えないなら勝手にすれば。」
緑心「と、いうことなのでこれから宜しくお願いします!」
青灑「うん。皆、宜しく。」
この日四季荘園の最後の入居者が揃った
〜28話end〜
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