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第29話

女「なぁ、アンタいつんなったら名前教えてくれはるん?」 女は向かいの鉄格子の先から少年に向かって話しかける 少年「だから、言ってるじゃん。兎黒だって。」 女「そんなん、アンタの好きな数字で作られた適当な名前やないんか。囚人番号まで1096にしてもろぅて。」 女は関西よりの喋り方で切れ長の美しい目をしているその目で兎黒を見る 兎黒「うるせぇよ。ババァ。」 女はその言葉にムッとした表情をする 女「ババァて何やねん。アタシかてアンタと7つしか違わんわ。アホ!」 兎黒「ふぅん。俺にとっちゃァ充分ババァだよ。」 兎黒は檻越しに見える外の満月を見た 兎黒「...静かだな。」 女は横目で兎黒を見ると目を瞑りゆっくり口を開いた 女「ところでアンタ、何をしでかしてこんな所におるんや。まだ若いんやからこんな所に居ったらアカンやろう。」 兎黒「うーん。まぁ、裏と関わりすぎたってゆーのかな。」 兎黒は口角を上げ悪戯な笑みを浮かべる 女「そんなん、冗談にもならへんで。オカンとか家族とかが心配するんとちゃうんか」 女はまるで自分の子を叱るように言う 兎黒「んー。俺、昨年から親両方とも居なくなったんだよな。多分死んだ。」 その言葉に女は気まずそうに口を閉ざした 兎黒「そんな顔するなよ。別に寂しくもないし、そもそも俺の親なんて今までもどっか勝手に居なくなってたんだ...。」 兎黒は少し寂しそうに話す。 その日の2人の会話はまるで囚人では無いような雰囲気だった それから3年の月日が経つ 女「あんたも、いよいよ明日でココを出るんだね。」 兎黒「...あぁ。寂しいか?」 女は冗談でも言うように笑った 女「そりゃぁ、アンタに大分愛着湧いてんねんで?寂しぃなるけどその反面嬉しいって感じもあんねん。」 兎黒はそうか。と少し考えるような仕草をしたあと布団に潜り込むと、小さな窓から見える星空を見上げた 兎黒「なぁ...寝たか?」 兎黒が聞いても返事が返ってこない 兎黒はムクリと起き上がり軽々しく窓の鉄格子を外し外の世界へ飛び出した それと同時に警告音が刑務所内に響き渡る 女「なんや。何事やねん...!兎黒起き...。兎黒...?」 女は飛び起き兎黒の方を見るとそこにはもう兎黒の姿は無かった 〜29話end〜

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