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第36話

兎黒を追い緑心と空は夜の街へ降りた 昼間は至って何も無い普通のこの街も夜になるとヤクザやドラッグ売買に染まる者達が彷徨う治安の悪い街に変わってしまう 緑心「空、離れちゃダメだよ。」 緑心は空を連れ物陰から兎黒の行動を見張っている 空「...。」 空はどこからか香る何かの匂いを嗅いでいる 緑心「...そ、空?」 空「うっ!」 緑心「え、ちょっ、空...!?」 空は緑心が繋いだ鎖をいとも簡単に引きちぎり、香りのする方へ走って行ってしまう 緑心「...どうしよう。」 緑心は空の走っていった方と兎黒を交互に見る 緑心「またスグに戻ってくるよね...。」 道端では泥酔した者同士の怒涛や暴力団達の叫び声などが騒がしく街に響き渡っていた そんな中、緑心は少しずつ、少しずつと兎黒の後を付ける 緑心「...ここは?ビル...?」 大きな街の数並ぶビルの中の最も目立つ派手に飾られたビル。 そこには『夜の街チュべラーズ』と書かれている大きな看板が掲げられていた 緑心「ホストクラブだよね...?」 緑心はまさかと思い中に入っていく行く女性達を見ながら少し考える 緑心「よしっ...。」 緑心はこの街には似合わないような近くの小さなお店でいくつかのものを買う それはどれも女物で普通の男性は決して着ることはないであろう物を買っていた ウィッグにタイトのドレスそしてピンヒールまるで手慣れているように全て着こなす緑心 それは全て女装をするために買ったものだった 緑心「化粧もしたし、良いよね...。違和感ないよね。」 何度もショーケースに映る自分を確認し4度目の確認あたりで覚悟を決めたように先ほどのホストクラブへ足を運ぶ ーカランカランー 店内に入ると思っていたホストクラブとは違いお洒落なジャズが流れその辺のホストクラブよりは少し落ち着いた雰囲気だった 男「お客様、本店は初めてのご利用で?」 高そうなスーツを身にまとった高身長の男が緑心に話しかける 緑心「えっ!?あ、はい。初めてです...。」 男「ふふっ。大丈夫ですよ。ここは貴方のような美しい女性が羽を休める場所です。それでは、席にご案内いたしますね。」 男は臭いセリフをさらりと吐き、緑心の手を取り席へ誘導する 緑心「(ちゃんと、女に見えてるんだな。)」 緑心は席に案内されている間周りを見渡し兎黒を探す だが、どれだけ探しても兎黒の姿はない 男「こちらのお席へどうぞ」 緑心「え、あの...。ココって。」 男は営業スマイルを絶やさず説明する 男「貴方様が美しいので...パパから美しいお方はこちらへ案内するように言われておりますので。」 緑心「はぁ。」 緑心は先ほどの大勢の人で埋め尽くされた部屋とは別の明らかにVIPルームであろう部屋に案内される パパというのはきっとオーナーの事なのだろう 男「少々お待ちください只今担当の者が来ますので」 緑心は個室に置き去りにされる 緑心「ここじゃぁ兎黒さん探せない...。どうしよう。」 2分ほど経つと再び部屋の扉が開く 先ほどの男よりもさらに高身長な男が入ってくる 男「初めましてお嬢様。わたくしが貴方の担当をさせていただきます。アイトと申します」 そのアイトという男は緑心の隣に座り注文を聞く アイト「まず、何頼みます?」 緑心「えっと...実はお酒弱くて。」 アイト「では、こちらなんてどうでしょう。ノンアルコールになっております」 緑心「あ、じゃぁコレで...。」 緑心は文字のいっぱい書かれたメニューの一つを指さすとアイトはすかさず電話機を手に取り注文を入れる アイト「名前、聞いてもいいかな?」 緑心「あ、はい...えっと、ミドリです。」 アイト「ミドリか。いい名前。あなたと同じく美しい名前だ。」 緑心「ははっ。ありがとうございます。」 緑心が少し照れくさそうに顔を下げると 部屋の扉が開き、注文のものが届く アイト「ミドリは何でココに来店してくれたの?もしかして運命の糸で引き寄せられちゃった?」 冗談交じりのアイトの言葉に少し苦笑いになる 緑心「アハハッ...そうかもしれないですねー...。」 何となく談笑をしているとアイトの手が緑心の太股に来る アイト「ミドリって可愛いしスッゲー俺の好みなんだよね。」 そう言いながらアイトは緑心に徐々に迫ってくる 緑心「えっと...ありがとうございます...?」 緑心は顔が近づいてくるのに気づき、アイトの口元に手をやる 緑心「さ、さすがにそれはダメですよ...!」 アイト「え?なんで?こんな格好してるのにさ、誘ってんじゃないの?ま、誘われなくてもVIPルームっていったら皆こーいうことするんだよ?」 緑心「いや、でもほら、私初めてですし...。」 そう言いながらもアイトは力ずくで緑心を押し倒す アイト「大丈夫。俺がリードしてあげるからさ。」 緑心「や、あのっ...やっぱり怖くて。」 アイト「ほら、俺に身を委ねれば怖いものなんてないよ?ね?」 アイトは緑心の耳元で囁くと首筋をなぞるようにキスをする 緑心「んっ...はぁっ...やだっ...」 アイト「ミドリ可愛いよっ...」 緑心はアイトの息がかかる度に反応してしまう自分が恥ずかし過ぎて涙を流す 緑心「あっ...もっぅ...ヤだってばぁ...!」 すると扉の向こうから兎黒の声が聞こえる 緑心「...。すみませんアイトくんっ!」 アイト「え?...いっっ!?」 緑心は言うと同時にアイトの股間を思いっきり蹴る 緑心は代金をテーブルに置きそのまま逃走し、扉を開くと丁度兎黒の目の前に出る 兎黒「...んぇ!?緑心クン!?」 緑心「ちょっと、説明は後で!」 アイト「んのぉ...アマァ!!」 キレたアイトは緑心の後ろから歩くのも辛そうにしている 緑心「逃げますよ!」 兎黒「は?え、ちょっっとぉぉ!?」 緑心は兎黒の手を引きヒールを履いているとは思えない速度で全力疾走し、チュべラーズから出て街の雑踏に紛れていった 〜36話end〜

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