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第4話

数年が経ち、霞は十二になった。まだまだ幼い少年特有の危うい美貌を携え、何一つ出来なかった芸は達者になり、がさつであった言葉も所作もすっかり嫋やかになった。 月影に次ぐ人気の陰間となるに違いないと言われ始めて早数年。 霞の水揚げが決まった。 相手は小田という商人で、月影の馴染みの客であった。 霞も何度か言葉を交わす機会があったが、豪快でありながら商人特有の細やかな気遣いの出来る恰幅の良い大男だった。 愛想も金の羽振りも良く、店での評判も良い男であったが、霞はこの男がどこか苦手であった。 「小田様なら心配ない。とてもお優しい方だよ。ゆるりと構えていつも通りにしなさい。霞なら大丈夫さ。」 いつまでも怯えて泣きそうな顔をする霞にそう言って頬を撫でてくれたくれた月影はとてもとても美しかったけれど、霞は不安を拭いきれずにいた。 小田が時折見せる舐めるような視線が、忘れられなかったのだ。 そしてその不安は、的中することになる。 「お前を買える日を長年待っていた。」 舌なめずりをしながらそう呟いた小田は、酒にも料理にも手を付けず大きな身体で霞に襲いかかった。 怯える霞の手脚を抑えつけ、月影が見繕ってくれた艶やかな銀朱の着物を剥ぎ取り、震える身体に猛った怒張を突き入れた。 悲鳴を上げた霞の頬を何度も張り、顔は腫れ上がって秘孔からは鮮血が流れ出た。 霞は泣いて許しを請うたが、小田は見たこともないニタリとした嫌な笑みを浮かべるばかり。 やがて騒ぎを聞きつけた楼主に助け出され、月影の元で一晩泣き明かした。 「許しておくれ霞…もう、君にこんな怖い思いはさせないよ。守ってあげられなくてごめんよ…」 月影も、霞を抱きながら一晩中泣いていた。 月影の鼻にかかった涙声。月影の細い腕。嗅ぎ慣れた月影の白梅香。 全てが霞を安心させた。

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