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第5話

更に時を重ね、霞は十四になった。 霞は、あれからまだ誰にも買われていない。 陰間の寿命は短い。 二十を超えるともう散り際の花となる。それまでに馴染みの客、出来れば自由になる大金を持った客と馴染み、身請けしてもらうのが華々しい。 身請け先の見つからなかった陰間の末路など、目を覆いたくなるようなものばかりだ。 「月影様…私は、いつになったらお客を取れるようになるのでしょう。」 霞は焦りを感じて、月影にそう尋ねた。 月影は昔と寸分違わぬ微笑みで、ゆるりと首を振って答えを返した。 「霞にはまだ早いよ。」 「そんな、私はもう十四になりました。遅すぎるくらいで…」 「齢の話ではないよ。まだ怖いだろう、あんなことになって…可哀想に。」 そう言って柔らかく霞を抱きしめてくれたのだが、霞はその腕の中が何故だか居心地悪く感じた。 理由はわからない。 強烈に憧れて、お側に居られることがあんなにも嬉しかったのに。月影が秘孔を拡げる稽古のために触れてくれるのがあんなにも嬉しかったのに。 「おいで、霞。大丈夫。私がここにいられるうちは、私が君を守るよ。」 当然ながら今も続く月影との二人だけの訓練の時間が、苦痛になっていったのはいつからだったろう。 いや、答えは解っていた。 小田との一件以降、月影は昼間の稽古の時間以外にも決まって客が帰った後に霞に触れるようになった。それは即ち、月影が誰かに抱かれた後。 誰かに抱かれたそのままの身体で触れられるのが嫌だった。誰かに向けられたであろう熱を孕んだ舐めるような視線で見られるのが嫌だったのだ。 あの時の小田の視線と同じだったから。

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