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ここは、どこだ。 白い靄のかかった視界を見回す。 …歩道の上だ。 遅れて今は塾の帰りだという情報が頭へ入り込んでくる。 その記憶のままに家へ向かって歩いていく。 すると、後ろから確かにアクセルの音が聞こえてきた。 音の方をゆっくりと振り向くのと同時に2tトラックが俺の体を突き飛ばす。 死にたく、 「な、い……」 急に喉から出た言葉に目を見開く。 目線の先には、ついさっき見たはずの白い天井だけが広がっていた。 目覚めてすぐに"薬"が頭をよぎる。 「ぃ"、っ……」 慌てて飛び起きるとピキピキと体へ痛みが走りそのまま蹲るように前へ体を折ってしまう。 「…驚かせるな。」 「皆木、…」 「体…内蔵はなんともないか。」 「内蔵、…?…わからない、けど多分何も無い。」 「胃が痛かったり腹が痛かったりはないか?」 「ない。」 「そうか、なら良かった。」 横を見ると皆木が澄ました顔で本を読んでいた。 少し顔を上げていたが俺との会話を終えるとどうでも良さそうにページをめくり、目線は本へ戻ってしまう。 …何でこいつ横にいるんだ。 「おい、薬……」 「抑制剤ならうなされていた時に飲ませた。」 「…そっちじゃなくて、…避妊薬の方だ。」 「あぁ。それも飲ませた。きちんと決められた量だけな。」 皆木はチラリと目線を上げると少し睨むように俺を見た。 あの時、錯乱していたとはいえ大量に服用したことを怒っているんだろう。 謝るべきだと思い口を開きかけたがふと一つ引っかかった。 別に、俺が死のうが何が起ころうが怒られる筋合いは無いだろう。 「…何か言いたいなら言え。」 「何…、もない。」 「あぁ、そうか。それなら俺から話を聞かせてもらう。あそこで何が起こったのか俺は知る義務があるからな。」 「はぁ、…!?」 「担任で保険医だぞ。身体も薬でどうにかなる問題じゃない。第一、お前が保健室を飛び出してさえ無ければあんな事にはならなかっただろ。」 「…それは、……」 たしかにその通りだ。 感情的になって出ていったせいであんな目にあってしまった。 …隠そうとしたレイプの事も、もう隠す意味もないだろう。 「少しでも反省してるなら話せ。まぁ、拒否権はないけどな。」 「性格悪い、っ……」 「悪くて結構。俺はお前らクソガキの管理をしなきゃなんないんだよ。目をかけてもらってるだけでもありがたく思え。」 「…事務的に、…仕事だからか?」 そう聞くと皆木は目を細めて怪訝そうな顔で言った。 「当たり前だろ。お前個人に興味も同情も一ミリも無い。」 …だろうな。 分かっていた、別に不満はない。 けれど少しだけ。 何かを期待してしまったのが馬鹿だった。 俺は期待はずれのΩ、それ以上はない。

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