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しばらくそのままリビングで待っていたが直にウトウトして瞼が重くなってくる。 今日は長い1日だった。 ここで眠ってしまってもアイツがこれば声をかけてくるだろう。 そう気を許せばすぐに眠気に負けてしまう。 クタリと体の力が抜け、机に体を預けてはすぐに眠りに落ちた。 どれくらい眠った頃だろうか。 遠くから機械音が聞こえてきて音のない夢から引きずり出される。 目を開くと俺が眠りについた頃から30分は時間が経っていた。 するとまた遠くから呼び出し音が聞こえてくる。 …随分長風呂らしい。 俺はまだ少し寝ぼけた体で1つ伸びをするとすぐに立ち上がり風呂場へと向かった。 一体なんの呼び出しだろうか。 脱衣所へ踏み込み風呂場へノックすると中へ声をかける。 「どうした、のぼせたか。」 応答はない。 もしかすると本当にのぼせて死んでるのかもしれない。 「開けるぞ。」 そう声をかけ風呂場の扉を開けると熱い空気と湯気が前から襲ってくる。 が、視界に楠本はいない。 おかしいと思い少し下へ目線をずらすと床に倒れ込み頭からシャワーを浴びたまま肩で呼吸をするソレがいた。 そしてソレに気付いた瞬間心臓がドクンと波打つ。 「おい、大丈夫か。」 「…っ…な、んで……、」 「とりあえず外へ出すからもう少し耐えろ。もう大丈夫だ。…大丈夫だから。」 シャワーのお湯を止め、暑すぎる体を抱き上げ脱衣所へその体を下ろす。 見つけてすぐに気付いた。 普通なら到底耐えられない程、Ωの香りがする。 フェロモンに襲われる。 苦しそうな楠本の体へバスタオルを被せすぐに換気扇を回しては顔に張り付いた前髪を掻き上げる。 「水と薬を取ってくる。此処で待ってろ。」 「わ、か……っ、た…」 「ちゃんと呼吸をするの忘れるなよ。」 そう楠本へ告げその場を離れる。 台所へ戻り水と薬を取り、すぐに脱衣所へと戻っていく。 頭ではわかっていても脳は誘惑されていく。 Ωの香りが、楠本の香りが。 媚薬みたいに俺を支配していく。 熱に浮かされた頬も、赤く色付いた肌も。 噛みつきたくて仕方ない。 「み、な…き……っ」 「…あぁ。水、自分で飲めるか。」 「んん…、…」 俺の問いかけに弱々しく首を振ると熱い息を吐く。 それは飲ませろという合図か、飲ませてもいいという許可だろう。 俺は口に冷たい水と薬を放り込むと熱い頬へ手を触れた。 あの日、保健室で行った同じ行為とは違う。 明らかに感情のある"口付け"を交わす。 「ぅ、…はっ……、!」 「………ん、……。」 必要以上に長い口付けを終え、身体を離すとトロンとした目が俺を見上げた。 何人ものαをこの目で見上げたのだろうか。 ここで俺がもし手を出せば、俺は楠本の中で"多くのαの中の一人"にしかならないんだろう。 それをわかった上で身動きの取れない楠本の傍から少し離れた。 「大丈夫だ。」とわざと優しい言葉をかけて。

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