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「いっただっきまーす!」 先生のその声に俺も手を合わせていただきます、と呟く。 口に含んだカレーライスはよく知った家庭の味とはかけ離れていて、高級料理店みたいな味だった。 「口に合うかな?」 「美味しい。」 「よかった!キミの口に合うかが一番心配だったんだ。たくさん食べてたくさん寝たらきっとすぐに良くなるよ。」 「…心配してくれてたんだ。」 「当たり前だよ。なかなか目覚めなかったしね。身体が疲れてるんじゃないかな。」 先生はそう言うとチラリと俺を見てはすぐに目線を外し口いっぱいにカレーを押し込んだ。 おちゃらけてふざけたフリをしていても、確かに教師でしっかりしているらしい。 俺は口の中身をごくんと飲み込むと正直に今の不安を呟く。 「どうしてあんなに寝てたのか俺もわからなくて。」 「疲れてたからだよ。」 「…最近、授業出れてなくてただでさえ勉強追いつけてないのに。このままだと進路もどうなるか分からない。」 「不安、だよね。ボクができる限りキミの力になるよ。勉強も心も全部ボクが支えてあげる。」 先生はそう言うとスプーンを置いて俺の頬に手を添える。 俺はカレーを掬ったまま動けずにじっとその顔を見つめていた。 俺は今、何をされているのだろう。 「だからもう怖がらなくていいんだよ。…ううん、キミがもう怖がらなくていいようにボクが守ってあげるからね。」 「せんせ、…い……っ」 「目を閉じて何もかも忘れて。今日のココにはボクとキミだけしかいないんだから。」 先生が言葉を吐く度にジクジクと体が熱くなっていく。 指が俺の唇をなぞるのと同時にカタンと音を鳴らしてスプーンが皿に落ちる。 まるで催眠術でもかけられたみたいに体が動かない。 目を逸らせない。 薄い唇がゆっくりと近付いてくる。 「……ん、っぅ……!」 じんわりと熱い唇が重なる。 溶けるみたいに何もかもを忘れてしまう。 なにか大切なことも。

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