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何かおかしい。 そう分かっているのに、行動を起こすことが出来ない。 体の力が上手く入らなくて頭がクラクラと揺れる。 けれどそれは気持ちが悪いものではない。 「…せんせ、………」 「どうしたの?どこかおかしい?」 「身体が、おかし…くて…っ、…」 「発情期…では無いみたいだけど。」 「…じゃあ、…なんで…?」 どこか不安に煽られる。 服の胸元を掴んで俯くと、先生は席を立ち上がり傍まで来ると俺の頬に手を当てた。 それからコテンと首を傾げては「おかしいね」とだけ呟く。 「え……?」 「熱も無いよ。疲れ…ううん、きっと違う。ホントはキミが一番わかってるんじゃないかな。」 その言葉にドキリとする。 本当は俺もわかっている。 そんなつもりは無いのに、体の奥がジクリと熱くなって何かを求めている。 発情期とは違う。 俺自身の意思で。 「…こんなの、おかしい……っ…」 「怖い事じゃないよ、無理やり犯されるうちに身体だけ覚えただけ。楽に…なりたい?」 一言一言、言い聞かせるみたいに甘い声が吐き出される。 赤い舌に惑わされるように頷くと先生はニッコリと笑った。 それから結んでいたゴムを外し腕に通すと首を振って髪を広げる。 「ベッドまで自分の足で歩けるね?」 「……ん、…」 よくない。 こんなの、望んでない。 そんな気持ちを崩すように俺の足は歩き出していた。 俺は今からこの人に抱かれるのだろうか。 憎くて仕方ない、αに。

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