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拙い足取りの彼を支え、ベッドまで導いてあげる。 ベッドに着くとすぐに倒れ込み一つ熱い息を吐いては涙っぽい目でボクを見上げてくる。 …これは狼の好きそうな子だ。 「…痛くはしないからね。」 「ん、……」 その約束がこの手の子には一番効くだろう。 ボクもそっとベッドへ上がると彼の足へ跨るように乗り膝立ちで見下ろす。 カッターシャツのボタンへ手をかけ上から2つ外したところでベッドサイドへ置きっぱなしだった携帯が着信音を鳴らす。 あぁ、マナーモードにしておけばよかった。 「ちょっと待ってね。」 「…わかった。」 断りを入れその頭を撫でると、彼の上から退いてベッドへ腰掛けたまま携帯を手に取る。 画面には想像通り 優 の文字があった。 「お取り込み中だよ。」 『やっと出たな…!お前、アレから楠本はどうした?』 「…さぁ。」 『さぁ、って…またどこかに逃げ出したとかそんなのじゃ無いだろうな?』 さぁどう言おうか。 まさか家まで連れ帰って今襲おうとしています、なんて正直に言うわけがない。 家に返したはすぐにバレだろうし…いや、ドレを選んでもこの子が口にすればバレてしまう。 …そうか。 この子が話せなくなるようにすればいい。 「自分でなんとかするって笑顔で帰っていったよ。その後は知らない。…それじゃ切るよ、ボクお風呂の途中なんだ。」 『あ、おいっ…まだ聞きたいことが…!』 強制的に電話を切り今度はマナーモードにして向こうへ投げ捨てる。 振り向くと心配そうな、いや不思議そうな顔でボクを見上げる彼がいた。 「大丈夫だよ。厄介な幼馴染からだから。」 「…皆木か?」 「そう。ね、楠本クン。これからの事はボクら二人だけの秘密だよ。キミがもし話しちゃったらボクは学校にいられなくなっちゃうんだ。」 「わかった…、…」 そういう不安気な顔がどこか幼くて可愛らしく見える。 この子は年齢よりも幼く見えるらしい。 そんな彼の頬へ手を当てゆっくりと口付ける。 全てを、食べ尽くすように。

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